進化と発展を続ける「日本ワイン」
世界基準で通用するワイン産地として、今後の進化と発展が大いに期待される「日本」。従来の日本の葡萄栽培といえば、その主流はあくまでも生食用葡萄でしたが、近年におけるワイン産地としての盛り上がりもあり、醸造用葡萄の栽培が増加、また、高い品質を求めるこだわりを持った栽培農家の存在などもあって、醸造用葡萄の発展には目を見張るものがあります。雨が多く湿度の高い気候風土を持つ日本では、高品質な醸造用葡萄を栽培するのが非常に難しいものの、日本に適した品種を生みだすためにその人生を捧げた「川上善兵衛(※1)」の存在や、世界中で経験を重ねた志の高い若い世代の台頭など、日本人らしい工夫と努力の甲斐もあり、その質の向上には年々磨きがかかりつつあります。日本固有の品種として、初めてOIV(※2)に登録された「甲州」や「マスカット・ベーリーA」の可能性、さらには、ピノ・ノワールの適地として大きな期待が寄せられる「北海道」の存在など、ワイン産地としての日本には大きな期待がかかります。
ワイン産地「日本」としてのひとつの転機とも言えるのが、「ワインのラベルの表示の新しいルール(果実酒等の製法品質表示基準)」の新設(※3)。従来、日本で造られるワインの中には、海外から濃縮果汁を輸入して造るものが多く存在し、一見すると原料となる葡萄が日本で栽培されたものか、海外で栽培されたものか、非常に分かりにくくなっていました。そういった問題を解決し、消費者がより適切にワインを選べるよう、分かりやすい表示基準が新たに定められています。新たなルールは、国産葡萄のみを原料とし、日本国内で製造された果実酒を「日本ワイン」と定め、海外産の濃縮果汁使用ワインとの差別化を図っています。今後、ワインのラベルに「日本ワイン」という表記があれば、それは葡萄を含めた全てが日本国内で造られていることを指し示すことになります(※4)。
※1)1868年、新潟県の庄屋の家に生まれる。勝海舟との交流を通じてワインの道に進み、生涯を通じて葡萄品種の交配と研究に没頭。数多くの固有品種を世に残している。岩の原葡萄園の創業者。
※2)仏語のOrganisation internationale de la vigne et du vinの略。英語ではInternational Organisation of Vine and Wine。日本語では国際ぶどう・ぶどう酒機構という意味。
※3)平成30年10月30日に適用開始。
※4)日本ワインに限り、地名、葡萄品種名、収穫年が表記可能。地名が表記できるのは、その地域に収穫地と醸造地があり、その土地で収穫した葡萄の85%以上を使用した場合のみ。その地域に収穫地しかない場合は、その地域産の葡萄を使用していることのみ表記可能(葡萄を85%以上使用した場合のみ表記可)。逆に醸造地しかない場合は、その地域で醸造したワインであることのみ表記可能(原料となる葡萄の収穫地ではないことも併記する必要性あり)。葡萄品種名については、単一品種を85%以上使用した場合のみ。二品種以上表記する場合は、表記する品種の合計で85%以上使用し、使用量の多い順で記載。収穫年については、同一収穫年の葡萄を85%以上使用した場合に表記できる。
北海道 Hokkaido
ニキヒルズワイナリー Niki Hills Winery
余市町の南、より内陸側に隣接する仁木町で、2019年7月にグランドオープンした複合型のワイナリーがこの「ニキヒルズワイナリー」。2014年にこの地の視察に訪れた、総合広告代理店DACグループの代表取締役社長「石川和則」が、地方創生による仁木町の活性化に貢献したいという想いの元、地権者との交渉を経て5年がかりで創業。グランドオープンに先立ち、2015年からは仁木町および余市町の契約農家の葡萄を使ってワイン醸造を開始し、2019年には遂に念願の自社畑で栽培される葡萄のみを使用した初のエステートワインも誕生しています。
平川ワイナリー Hirakawa Winery
余市の先進的農家として名高い「藤城議」から畑を引き継ぎ2015年に創業。縄文時代から続く土地の歴史、その先人達が築き上げた功績と文化を引き継いでいるという想いを「十字架のアイヌ文様」に込めています。畑は海由来の温暖な気候と山由来の冷涼な気候が交差する場所にあり、ヌッチ川が生み出す南斜面は肥沃な土壌を生み出しています。葡萄が育つ自然風景を香りや味わいの中に映し出すことが最高のワイン造りと考え、醸造学や味覚学の知識を最大限に活かし、「料理と相乗できるワインは畑でデザインされるべき」という一貫した理念と信念のもと、テロワールの具現化と美食文化の共存を追求しています。
キャメルファームワイナリー Camel Fram Winery
カルディコーヒーファームでお馴染みの、キャメル珈琲グループが新たに立ち上げた農業法人が「株式会社キャメルファーム」。設立は2017年と歴史は浅いものの、冷涼な気候の余市にある畑は、1980年代から栽培が続く垣根仕立ての畑で、醸造用の葡萄栽培における先駆者でもある「藤本毅」の葡萄園を引き継いだものとなっています。また、イタリアワイン界の重鎮、著名醸造家でもある「リッカルド・コタレッラ」が技術的な側面をサポートし、余市の優れたテロワールとイタリアの醸造技術が見事に結実しています。
山﨑ワイナリー Yamazaki Winery
大いなるポテンシャルを秘めた北海道。この地で四代に渡って農業に従事し、家族で運営を続けているのが「山﨑ワイナリー」。農業そのものの発展に注力し、技術革新や農産物の高付加価値化など、農家の自立を進めた結果に辿り着いたのが「ワイナリーの設立」となります。農産物の品質にこだわって来たというこれまでの歴史を継続し、ワイン造りについても「少量生産でも高品質にこだわりを持つ」という想いを貫き、日々高みを目指しています。