特別特集「シャブリ」

フランスを代表するワイン産地ブルゴーニュ。そのブルゴーニュの北端に位置し、白ワインの代名詞と言えるほど、世界的にも非常に高い知名度を誇るのが「シャブリ」。過去を振り返ると、その高い知名度が仇となり、中身を伴わない名ばかりのシャブリで溢れた時代もありましたが、時代は変わり、現代においては高いクオリティを誇るだけにとどまらず、テロワールを具現化したその多様性、そしてそれらを現実的な価格で楽しめる偉大な産地として、その評価は見直され高い支持を受けています。

今やブルゴーニュを代表する偉大な白ワイン産地のひとつとなったシャブリ。実は1955年頃までは小規模な産地でしたが、20世紀後半になって非常に広範囲に拡大し、現在では約5,400haにも及ぶ一大産地に成長しています。以前はヨンヌの広大な栽培地域のひとつに過ぎず、白ワインではなく赤ワインやロゼワインとして有名な産地でもありましたが、フィロキセラの厄災以降は、ライバルとなる地域に対抗するために、より高い品質を誇る偉大なワイン造りにも目を向けています。昔は海の底だったという特徴のある石灰岩土壌、そのテロワールを最大限生かし、この地に適した高貴品種「シャルドネ」に注視することで、数多く存在する固有のクリマから、明確な個性を持った素晴らしいワインを数多く世に送り出しています。

シャブリという歴史ある産地には、既に高い評価を獲得した偉大な生産者だけでなく、名のある大手メゾン、協同組合などが多数存在し、日本にも多くのワインが輸入されています。しかし、近年においては伝統を重んじる古典的なスタイルの生産者だけではなく、若い世代による新たなシャブリが徐々に増加しつつあります。温暖化の影響や醸造技術の発達、そしてより自然な栽培によって葡萄そのもののポテンシャルが上がり、志の高い若い世代が、よりフレッシュな感覚で新たなシャブリ像を構築する傾向も見られます。その多様性のあるテロワールと、伝統的／現代的／自然派／折衷型、それぞれ幅広いスタイルを持つ生産者によって、今まさにシャブリという地の可能性が大きく羽ばたこうとしています。

4アペラシオン

• シャブリ・グラン・クリュ　100ha
• シャブリ・プルミエ・クリュ　782ha
• シャブリ　3,595ha
• プティ・シャブリ　1,055ha

シャブリは4つのアペラシオンによって構成され、土地の持つ個性を存分に発揮しながら、日常的な価格帯から特別な瞬間を彩る特別な1本まで、幅広いスタイルのワインを多く産出しています。（数値は2016年基準）

シャブリ　グラン・クリュ　Chablis Grand Cru

広大なシャブリの畑の中でも、スラン川を挟み、シャブリの街の反対側にある丘陵エリアのみが「グラン・クリュ」として認められています。グラン・クリュのアペラシオンとして認められたクリマは7つで、東から順番に「ブランショ」「レ・クロ」「ヴァルミュール」「グルヌイユ」「ヴォーデジール」「プルーズ」「ブーグロ」と並んでいます。地形的には、ブランショ、レ・クロ、ヴァルミュールが1つの丘の斜面に並び、間にあるグルヌイユを挟んで、隣の丘の斜面にヴォーデジールとプルーズが並ぶような形になっています。各クリマの評価としては、西端側にある2つのクリマ、ブーグロとプルーズがやや格下と見られ、2つの丘のそれぞれ南側に面しているレ・クロとヴォーデジールがより高い名声を得る傾向にあります。とは言え、実際には生産者による差や、ヴィンテージの違いといった要素の方がより大きな違いを生む場合もあるので、各クリマの優劣よりも、それぞれのクリマの持つテロワール、そのスタイルの差を率直に嗜むというスタンスの方が、より建設的な結果が得られそうです。

アペラシオンとしては格付けされていませんが、INAOには認められている「ムートンヌ」というクリマも存在します。クリマの位置はヴォーデジールの西端上部～中部にある約2.35haの区画で、ヴォーデジール側が2.24ha、プルーズ側が0.11haと、実際には両方のクリマにまたがっています。ただし、この区画はドメーヌ・ロン・デパキが単独所有する「モノポール」なので、現状では他の生産者からリリースされることはありません。

ブランショ Blanchot

ゲルマン語の「Blank」が名前の由来。斜面は南東向き。表土は白い石灰岩で、その下に粘土石灰質土壌が広がります。エレガントで優雅なスタイル。

レ・クロ Les Clos

1267年以前から葡萄が栽培されていたという歴史ある銘醸畑。斜面は南西向き。畑には礫が多く見られ、強いミネラルを纏う長命かつパワフルなスタイル。

ヴァルミュール Valmur

木苺の実という意味を持つ「Meures」渓谷や、「Meurs（壁）」が名前の由来とされている。斜面は西から南向き。強いミネラルと寿命の長さが特徴。

グルヌイユ Grenouilles

スラン川に近いこともあってか、古いフランス語の「蛙」が名前の由来。グラン・クリュの丘の斜面下部のみで構成され、粘土質土壌と果実味の豊かさが特徴。

ヴォーデジール Vaudésir

「願いの谷」が語源とされ、王家の畑に隣接するVau Daiseyの畑があったとされる。斜面は農道を挟んで南、北、北西向き。葡萄の熟度が高く、レ・クロに比肩する評価。

プルーズ Preuses

「石ころだらけの道」が名前の由来。ローマ時代の交通路沿いに位置し、斜面は北西から南東向き。比較的軽快なスタイルで、飲み頃がより早く訪れるのが特徴。

ブーグロ Bougros

スラン川がブーグロの丘のふもとで頻繁に氾濫したことで、「狭くなる」という地理的要因が名前の由来に。斜面は北西から南向き。区画ごとに多様なスタイルが生まれる。

シャブリ　プルミエ・クリュ　Chablis Premier Cru

シャブリのプルミエ・クリュには89のクリマがあり、それらはシャブリの街を中心にして周囲を取り囲むようにして各所に点在しています。ラベルに記載することが許されているのは40クリマのみですが、実際には隣接する他のクリマを名乗ることが許されている場合もあるので、固有のテロワールを詳細に紐解くということは、思った以上に難しいという現実もあります。それでも一般論として、シャブリの街を縦断するように流れる「スラン川」を中心にして、そのクリマが「右岸」にあるのか「左岸」にあるのか、そのどちらかで大まかな傾向を捉えることができるとされています。

グラン・クリュもある右岸のクリマは、基本的には男性的なスタイルとされ、堅牢性や硬い資質が主体となる傾向にあり、逆に右岸のクリマは、女性的で柔らかい表情が主体と言われています。実際には、近年の温暖化や醸造技術の進歩、そしてビオのような自然な造りや新しい生産者の誕生などもあり、テロワールの違い以上に、造り手ごとの差の方がより大きな違いを生み出すことも多くなっています。また、プルミエ・クリュのクリマとして認められてはいても、そのクリマ単体でボトリングされていない場合も多く、現実的に日本で流通しているクリマも限られているので、多様性あるプルミエ・クリュの概要を捉えるためにも、まずは右岸のクリマとして名高い、グラン・クリュの北に位置する「フルショーム」と「ヴォロラン」、さらにグラン・クリュの南に位置する「モンテ・ド・トネール」と「モン・ド・ミリュー」、そして左岸のクリマとして名高い「ヴァイヨン」と「モンマン」、こういった著名なクリマから飲み始め、好みにあったお気に入りの生産者を探しながら、徐々に各クリマを掘り下げていくという流れが非常に有用になります。

フルショーム Fourchaume

1. ロム・モール L’Homme Mort
2. ├ラルディリエ L’Ardillier
3. ├ロム・モール L’Homme Mort
4. ├ボワ・セガン Bois Seguin
5. └ラ・グランド・コート La Grande Côte
6. ヴォーピュラン Vaupulent
7. ├フルショーム Fourchaume
8. ├ヴォー・ピュラン Vau Pulan
9. └レ・ヴォーピュラン Les Vaupulans
10. コート・ド・フォントネ Côte de Fontenay
11. ├ラ・フルショーム La Fourchaume
12. ├コート・ド・フォントネ Côte de Fontenay
13. └ディヌ・シアン Dine-Chien
14. ヴォロラン Vaulorent
15. ├レ・クーヴェルト Les Couvertes
16. ├レ・キャトル・シュマン Les Quatre Chemins
17. └ラ・フェルム・クーヴェルト La Ferme Couverte

ベルディオ Berdiot

1. ベルディオ Berdiot

コート・ド・ヴォーバルース Côte de Vaubarousse

1. コート・ド・ヴォーバルース Côte de Vaubarousse

モンテ・ド・トネール Montée de Tonnerre

1. コート・ド・ブレシャン Côte de Bréchain
2. ピエ・ダルー Pied d’Aloup
3. スー・ピエ・ダルー Sous Pied d’Aloup
4. モンテ・ド・トネール Montée de Tonnerre
5. レ・シャプロ Les Chapelots

モン・ド・ミリュー Mont de Milieu

1. ヴァレ・ド・シゴ Vallée de Chigot
2. ピエ・ダルー Pied d’Aloup
3. モン・ド・ミリュー Mont de Milieu

レ・フルノー Les Fourneaux

1. モラン Morein
2. レ・フルノー Les Fourneaux
3. ラ・コート La Côte
4. シュール・ラ・コート Sur la Côte
5. コート・デ・プレ・ジロ Côte des Prés Girots

ヴォークパン Vaucoupin

1. ヴォークパン Vaucoupin
2. アドロワ・ド・ヴォークパン Adroit de Vaucopins

ボーロワ Beauroy

1. ボーロワ Beauroy
2. ├ベンフェール Benfer
3. ├スー・ボロワ Sous Boroy
4. └ヴァレ・デ・ヴォー Vallée des Vaux
5. トロエム（トレスメ） Troesmes
6. ├ヴァレ・デ・ヴォー Vallée des Vaux
7. ├コート・ド・トロエム（コート・ド・トレスメ） Côte de Troesmes
8. └アドロワ・ド・ヴォー・ルナール Adroit de Vau Renard
9. コート・ド・サヴァン Côte de Savant
10. ├ル・ヴェルジェ Le Verger
11. ├コート・ド・サヴァン Côte de Savant
12. ├ル・コタ・シャトー Le Cotat-Château
13. └フルークラン Frouquelin

コート・ド・レシェ Côte de Léchet

1. コート・ド・レシェ Côte de Léchet
2. ル・シャトー Le Château

ヴォー・ド・ヴェイ Vau de Vey

1. ヴォー・ド・ヴェイ Vau de Vey
2. ラ・グランド・ショーム La Grande Chaume
3. ヴィーニュ・デ・ヴォー・ラゴン Vignes des Vaux Ragons

ヴォー・リニョー Vau Ligneau

1. ラ・フォレ La Forêt
2. ヴォー・ジロー Vau Girault
3. ヴォー・ド・ロング Vau de Longue
4. ヴォー・リニョー Vau Ligneau

ヴァイヨン Vaillons

1. シャンプラン Champlain
2. レ・リス Les Lys
3. セシェ Sécher
4. ├シャタン Chatains
5. └セシェ Sécher
6. レ・ゼピノット Les Epinottes
7. レ・グラン・ショーム Les Grands Chaumes
8. ヴァイヨン Vaillons
9. ├シュール・レ・ヴァイヨン Sur les Vaillons
10. └レ・ヴァイヨン Les Vaillons
11. レ・シャタン Les Chatains
12. ロンシエール Roncières
13. レ・ブニョン Les Beugnons
14. メリノ / レ・ミノス Mélinots / Les Minos

モンマン Montmains

1. レ・モン・マン Les Monts Mains
2. レ・フォレ Les Forêts
3. ビュトー Butteaux
4. ├レ・ブー・デ・ビュトー Les Bouts des Butteaux
5. ├ヴォー・ミオロー Vaux Miolot
6. ├レ・ミリュー・デ・ビュトー Le Milieu des Butteaux
7. ├レ・ゼケリ Les Ecueillis
8. └ヴォージュラン Vaugerlains

ヴォグロ Vosgros

1. ヴォージロー Vaugiraut
2. ヴォグロ Vosgros
3. ├アドロワ・ド・ヴォグロ Adroit de Vosgros
4. └ヴォグロ Vosgros

ショーム・ド・タルヴァ Chaume de Talvat

1. ショーム・ド・タルヴァ Chaume de Talvat

コート・ド・ジュアン Côte de Jouan

1. コート・ド・ジュアン Côte de Jouan

レ・ボールガール Les Beauregards

1. レ・コルヴェ Les Corvées
2. ベック・ドワゾー Bec d'Oiseau
3. コート・ド・キュイシー Côte de Cuissy
4. ヴァレ・ド・キュイシー Vallée de Cuissy
5. レ・ボールガール Les Beauregards
6. オー・デ・シャンブレ・デュ・ロワ Hauts des Chambres du Roi