- Good Quality -
ケルナーはワイナリーから一望出来る南斜面の畑で栽培され、樹齢は18年。圃場の整備と植え替えによって、この2020年ヴィンテージを持って一旦リリース休止となります。
色調は薄めですが、それでも以前のケルナーと比較すると相対的には色付いている印象を受けます。青リンゴや二十世紀梨、グレープフルーツ、そしてその後に仄かな桃と、風味は鮮明で豊かな傾向にあります。ワイン名から「ドライ」の表記は消えたものの、それでもバックラベルには「極辛口」と明記されているだけあって、シャープなキレを感じる収斂性が印象的です。とはいえ、以前よりも華やかで香り高く、醸造的側面で歩を進めている印象を受けることもあってか、全体像としては強い酸とシャープなキレを受けても飲みにくく感じるようなことは特にありません。硬質さをベースにしながらも、多くの人にその表情を楽しんでもらえるような舵取りがなされていることもあってか、その個性を終始ポジティブに受け取ることが出来ます(切れ味は鋭いのに表情は穏やか)。
爽やかなグリーン系の風味をミネラル要素が裏支えしているその表情は、素直な魅力として飲み手に伝わるので、植え替えによってリニューアルされる将来のケルナー像が、今から楽しみでもあります。品種が持つ個性と、北海道三笠市達布というテロワール、そして山﨑ワイナリーのビジョン、これらが一体となった世界観を次に楽しめるのはしばらく後になりそうなので、まずはこの2020年を存分に楽しみたいところです。
(2021/09)