特別特集「ジュヴレ・シャンベルタン」

ブルゴーニュにおけるピノ・ノワールの主要産地「コート・ド・ニュイ」。その中で特に抑えておきたいいくつかのアペラシオンのうち、「ブルゴーニュの王」とも称され、9つものグラン・クリュを擁するコート・ド・ニュイ最大の産地こそが、この「ジュヴレ・シャンベルタン」となります。

偉大なピノ・ノワールを産出するエリアとしては北端に位置するジュヴレ・シャンベルタンですが、その冷涼性に加え、「コンブ・ラヴォー」と呼ばれる大きな背斜谷から流れ込む冷たい風と、丘の上から吹き下すフェーン現象による暖かな風の影響、そして多様な石灰質土壌に2つの背斜谷から広がる小石と沖積土が混じる表土など、偉大な産地たらしめる際立ったテロワールを兼ね備えています。その昔、修道僧の手によって各クリマが定められましたが、ブルゴーニュの中で最初に行われた土地こそがジュヴレ・シャンベルタンでもあり、長い歴史に裏打ちされた偉大なワイン産地だとも言えます。

一般的に言われるジュヴレ・シャンベルタンの特徴としては、色調が濃く、男性的な力強さや肉感、そして構造の強さや堅牢性の高さなどが挙げられます。しかし、ジュヴレ・シャンベルタンは他のブルゴーニュのアペラシオンよりも広く、実際には北部、中部、南部、それぞれで性格が異なります。また、一般的なブルゴーニュのアペラシオンは県道974号線（国道74号線）の西側がその範疇となっていますが、ジュヴレ・シャンベルタンにおいては東側にも大きく広がっており、これらのエリアからは比較的軽快なスタイルのワインが造られています。

北西部で特に注目すべきエリアは、コンブ・ラヴォーの北側斜面に連なるプルミエ・クリュのクリマ群で、この辺りは風の影響で雨の影響を受けにくいことや、標高がより高く斜面も急という特徴があります。最も有名な「クロ・サン・ジャック」を筆頭に、同等の評価を受ける隣接するクリマ「カズティエ」、そして最北の「シャンポー」と、グラン・クリュに勝るとも劣らないクリマが多数存在する要注目エリアになります。

中東部はコンブ・ラヴォーを中心に広がる扇状地で、県道974号線の東側にも大きく広がっていることで一般的な評価は大きく下がりますが、実際には、コンブ・ラヴォーから数億年かけて流れ出た堆積物が県道の東側まで広がっているので、このエリアからもジュヴレ・シャンベルタンとしての固有のテロワールを持ったワインが産出されています。とはいえ、相対的に飲み頃が早く訪れる軽快なスタイルになりがちなので、基本的には県道の西側（できればグラン・クリュ街道のさらに西側）に存在するクリマを選ぶ方が、より良い結果が得られる傾向にあります。

中南部の最大のポイントは、南北に連なるグラン・クリュのクリマ群となります。ジュヴレ・シャンベルタンが擁する9つのグラン・クリュは、全てコンブ・ラヴォーの南側から始まり、コンブ・グリザールにまで至る緩やかな丘の斜面に連なっています。傾向としては、グラン・クリュ街道の西側にあるクリマがより長命で偉大なワインとされ、「シャンベルタン」と「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ（※）」を中心に、北側の「マジ・シャンベルタン」と「リュショット・シャンベルタン」、南側の「ラトリシエール・シャンベルタン」と、気品高く偉大なクリマが連なります。逆にグラン・クリュ街道の東側にあるクリマは相対的により親しみやすいスタイルで、「シャルム・シャンベルタン」「シャペル・シャンベルタン」「グリオット・シャンベルタン」と、豊満さや飲みやすさがより印象的でもあります。また、最南端にある「マゾワイエール・シャンベルタン」は、隣接するシャルムと生産区域が同一と定義されていることから、多くの造り手はより著名なシャルム・シャンベルタンとしてリリースしているというのが現状です。しかし、それぞれを構成するリュー・ディとなる「オー・シャルム」と「マゾワイエール・ウ・シャルム」は、実際には同一ではなく微妙に異なるテロワールを有しているとも言われているので、もしシャルムとマゾワイエールをそれぞれ分けてリリースしている造り手を見つけた場合は、実際に飲み比べてみるのも面白いかもしれません。

※）シャンベルタン・クロ・ド・ベーズの区画で造られたワインは、隣接するシャンベルタンを名乗ることが許されていますが、逆にシャンベルタンの区画で造られたワインは、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズを名乗ることが許されていません。

グラン・クリュ Grands Crus

リュショット・シャンベルタン Ruchottes-Chambertin (Ruchottes du Dessus, Ruchottes du Bas)
マジ・シャンベルタン Mazis-Chambertin (Les Mazis-Hauts, Les Mazis-Bas)
シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ Chambertin Clos de Bèze (Clos de Bèze)
シャペル・シャンベルタン Chapelle-Chambertin (Les Gémeaux, En la Chapelle)
グリオット・シャンベルタン Griotte-Chambertin (En Griotte)
シャンベルタン Chambertin
シャルム・シャンベルタン Charmes-Chambertin (Aux Charmes)
ラトリシエール・シャンベルタン Latricières-Chambertin (Latricières) マゾワイエール・シャンベルタン Mazoyères-Chambertin (Mazoyères ou Charmes)

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