特別特集「ニュイ・サン・ジョルジュ」

コート・ド・ニュイの最南端に位置し、隣接するプルモー・プリセ村と合わせて南北に長く伸びる産地が「ニュイ・サン・ジョルジュ」。1930年初頭のAOC策定時に、政治的側面や税金等の問題でグラン・クリュの認定を断ったと言う経緯があり、偉大な畑を有しながらも「グラン・クリュのないAOC」として現在に至っています。とは言え、歴史的にも昔からグラン・クリュに相応しいと言われている「レ・サン・ジョルジュ」をグラン・クリュに昇格させようという動きもあり、先頭に立つティボー・リジェ・ベレール、そして同世代でもあるフェヴレやアンリ・グージュという若き造り手を中心として、レ・サン・ジョルジュが誇るテロワールの優位性と歴史的な評価を主張する声が上がっています。

ニュイ・サン・ジョルジュのエリアは南北に細く長く伸びるように広がっていますが、縦長の産地ということもあって、実際には北部、中部、南部で大きくテロワールが異なり、特にニュイ・サン・ジョルジュ村の集落を横切るように流れるムーザン川の渓谷を境にして、北側にある「ヴォーヌの丘」と南側にある「サン・ジョルジュの丘」ではより明確な違いが見られます。

北部は隣接するヴォーヌ・ロマネと地続きと言うこともあり、表土は薄めで、母岩となる石灰岩の上に砂利が混じったシルトや粘土が覆い、ヴォーヌ・ロマネに似た柔らかくエレガントな表情を持っている傾向にあります。逆に南側にあるサン・ジョルジュの丘は粘土質の土壌がより強く、ボリュームのある果実味や力強いタンニン、そして骨格を感じるパワフルなワインが多く生まれ、この力強さこそがニュイ・サン・ジョルジュの全体的なイメージとして定着している傾向にあります。また、サン・ジョルジュの丘を越えてさらに南下した位置にあるプルモー・プリセ村のエリアでは、再び石灰質土壌が強くなることもあり、相対的により柔らかな表情を主体としたワインが多く産出されています。

一般的には、男性的な堅牢さや硬さが主体となった険しいスタイルと認識されることが多いニュイ・サン・ジョルジュですが、それはあくまでもサン・ジョルジュの丘付近に位置する中央部のクリマに限ったスタイルなので、南北に細く長く伸びるニュイ・サン・ジョルジュの全体像を理解するためには、力強い中部だけでなく、よりエレガントな北部や柔らかい果実味を持つ南部も含め、それぞれのエリアが持つ固有のテロワールを実際に感じることが最大の近道となります。