特別特集「カロン・セギュール」
メドックの主要アペラシオンの中で最北に位置する産地が「サン・テステフ」。屈強でタンニン豊富なワインが多く生まれるというサン・テステフですが、この地の特徴をそのまま反映させた、まさに象徴的な存在とも言えるのがこの「シャトー・カロン・セギュール」。サン・テステフのエリアでは最北の位置にあり、メドックでもっとも古いシャトーのひとつでもあるカロン・セギュールは、1855年の格付けで第3級の評価を獲得し、現在においてもその当時のまま、ボルドーでは珍しい石垣に囲まれた「ランクロ」という55ヘクタールの畑を維持しています。そのテロワールは当時から変わらず現在でも守られ続けているので、セギュール公爵が愛したカロンの存在はいまだ健在だと言えます。
セギュール侯爵の想い、今に息づく
カロン・セギュールの歴史はローマ時代にまで遡り、その名の由来は、当時ジロンド川で使われていた輸送船の「カロンヌ」にあると言われています。シャトーの名声を頂点にまで高めたのは、18世紀に所有していたニコラ=アレクサンドル・ド・セギュール公爵の時代で、当時公爵は、ラトゥール、ラフィット、ムートンというボルドーの頂点に君臨する名だたるシャトーも所有していましたが、それでもなお「我ラフィットやラトゥールを造りしが、我が心カロンにあり」という言葉を残し、周囲の人を驚かせました。以降、シャトーは「カロン」から「カロン・セギュール」へと名前を変え、ラベルに記されたハートマークとともに公爵の強い想いが今もなお生き続けています。
ラベルのハートマークから、バレンタインなどの贈り物に重宝される傾向にありますが、ワインのスタイルはまさにサン・テステフらしく屈強で、ラベルの愛らしさとは裏腹に、飲み頃まで時間が掛かる非常にタニックな世界観がベースとなっています。これは3/4以上ブレンドされるとも言われるカベルネ・ソーヴィニヨンの特徴をそのまま反映した世界観でもあり、ある種、無骨な頑固親父のようなスタイルですが、その反面、ヴィンテージによっては非常に魅力的な果実味を見せることもあり、陽的な要素が開花した時に魅せるその表情は、ボルドー屈指の訴求力を放ちます。逆説的には、ヴィンテージによってかなり表情に差が出るとも言え、1966年と1975年を除き、60年代から80年代前半までは難しい状態のものが多くを占めます。しかし、ボルドーの伝説的なヴィンテージとなった1982年以降は見事に復活し、88年、89年、90年という輝かしい3ヴィンテージ、そして90年代を代表する95年、96年、さらにはミレニアムに沸いた偉大な2000年と続き、近年においてはカロン・セギュールらしい屈強な基本スタイルをはそのままに、より充実した果実味や、早くからでも近づきやすい世界観など、現代的な醸造スタイルも取り入れ、安定して良質なワインを生み出し続けています。
シャトー・カロン・セギュール Château Calon Ségur
ヴィンテージ情報2008年★★★★☆
夏が多雨で天候が悪く、日照量はあるものの冷涼だったため、葡萄が熟すまで非常に長い時間がかかった。純粋な天候そのものは厳しかったものの、徹底した選果や醸造技術の進化によって、最終的には概ね良好な出来となっている。
ヴィンテージ情報2006年★★★☆☆
7月の猛暑から一転、寒い8月と9月の雨によって困難が訪れたヴィンテージ。ただし、メドックは比較的良好で、雨は多いものの日差しも強く、困難に見舞われた他のボルドー地域と比較すると、相対的に良好な結果が得られた。
ヴィンテージ情報2003年★★★★★
歴史に残るほどの暑さと干ばつが最大の特徴。まさに猛暑のヴィンテージ。酸が弱い反面アルコールが高く、大柄のボディを持つワインが多い。記録的な暑さ故にバラツキの多いヴィンテージでもあるが、メドック北部では9月上旬の小雨でカベルネが救われた。
ヴィンテージ情報2001年★★★☆☆
9月が低温で乾燥していたこともあり、フレッシュな酸を持つエレガントなスタイルとなった。良好な酸とタンニンを持っていることもあり、比較的ゆっくりと成長していく傾向にある。伝統的なボルドースタイルに仕上がっているとも言える。
ヴィンテージ情報2000年★★★★★
力強く凝縮感があり、リッチなスタイルの偉大なヴィンテージ。作柄、収穫量ともに素晴らしく、ミレニアムという記念碑的な価値も相待って、歴史に残るほどの高値がついた稀有なヴィンテージ。品質は高いものの、高価格故に投機的な側面が強いという特徴も。
ヴィンテージ情報1998年★★★☆☆
地域によってバラツキのあるヴィンテージ。収穫が早い右岸を中心にして傑出した出来となったものの、収穫が遅いカベルネ主体の地域ではやや難しい作柄となった。タンニンは豊富なものの、生っぽい硬さなどを感じる傾向にあり、バランス的にやや難がある。
ヴィンテージ情報1997年★★☆☆☆
春先から気温が高価ったものの、7月の気温低下や8月の熱波など、異常気象とも言える天候不順が目立ったヴィンテージ。豊作で、果実そのものは非常によく熟しているものの、その反面、酸がかなり弱い傾向にあり、飲み頃が早く訪れる親しみやすいワインが多い。
ヴィンテージ情報1996年★★★★★
暑く乾燥した作柄で、カベルネにとっての当たり年であり、メルローよりもカベルネの比率が高いシャトーで特に成功した偉大なヴィンテージ。1990年とともに90年代を代表するヴィンテージとして認知されていることもあり、その評価に合わせて価格もかなり高い。
ヴィンテージ情報1994年★★★☆☆
暑く乾燥した夏のおかげで偉大なヴィンテージへの足がかりを得たものの、9月に入ると天候が悪化し、175ミリという膨大な雨が降ったことで不安定な作柄となった。タンニンが硬く生っぽい傾向にあり、バランスを取るためにカベルネよりもメルローの比率が高い。
ヴィンテージ情報1992年★★☆☆☆
温暖な天候で収穫量は比較的多いものの、葡萄栽培にとって最悪のタイミングとも言える9月末から10月末までの間に非常に多くの雨が降り、急激な気温の低下など、困難な状況に追い込まれたことでかなり難しい作柄となった。
ヴィンテージ情報1990年★★★★★
過去最大級の収穫量が得られ、1947年以降では最も暑いヴィンテージ。特に土壌が重いサン・テステフでは傑出した出来となった。完熟した葡萄が得られたことで、タンニンは強さよりも甘さが印象的で、長寿命でありながらも比較的早くから楽しめるのが特徴。
ヴィンテージ情報1970年★★★☆☆
夏から初秋にかけての完璧な天候が物語るように、最高の品質でありながらも同時に生産量も多かったヴィンテージ。1981年以前のオールド・ヴィンテージの中では得に人気が高く、1975年や1978年とともに、70年代を代表するヴィンテージでもある。
ル・マルキ・ド・カロン・セギュール Le Marquis de Calon Ségur
2013年に一新したカロン・セギュールのセカンドワイン
サン・テステフ・ド・カロン・セギュール Saint-Estèphe de Calon Ségur
2013年に一新したカロン・セギュールのサードワイン