- Good Quality -
トラディショナルなボルドーワインのスタイルを現代の技術水準で再現したかのような世界観で、これぞザ・カベルネとも言えるようなメトキシピラジンの青みが主な表情として鎮座しています。また、ボディは屈強で多くのタンニンを有するものの、果実そのものはしっかり熟し、甘味のある親近感表情を生み出しています。ピーマンにも例えられ、ネガティブな要素の代表格として捉えられるメトキシピラジン由来の風味がこれだけ明確にあるというのも驚きですが、全体的なバランス感が良好で果実そのものが非常に熟していることもあってか、実際に受ける印象は決してネガティブではありません。現代の一般的なワインではほぼ見られなくなった風味なだけに、逆に新鮮な印象すら受けます。
伝統的な世界観を色濃く残すカロン・セギュールですが、それでも年々早めに飲めるようなスタイルへと変化している傾向にもあり、実際、現時点で10年経過したとは思えないような若さや固さを持った表情ではあるものの、それでもなんら苦もなく気持ちよく飲み進めることができます。2006年のような際立つ苦味もなく、程よいバランスで全体像が構築されているのが主な要因かもしれません。
やや気になるのが翌日に持ち越した場合の表情の変化で、屈強さや青みが急激に減衰し、逆に甘味や酸味が大きく前面に出るという際立った位相変化が発生し、もはや別のワインかと思うほどその性質に変化が見られます。これはこれで独特の甘酸っぱさが魅力となり、結果的に親しみやすい表情を作り出しているので決してネガティブではありませんが、一般的なカロン・セギュールのイメージとは異なるスタイルなだけに、抜栓日の表情とどちらが本当の資質なのか、多少気になるところではあります。
(2018/10)