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カロン・セギュールと言えば、トラディショナルな造りやゴリゴリのタンニンなど、飲み頃になるまでやや時間がかかる傾向にありますが、「最低でも10年は熟成させる必要がある」と言われた1998年にしては思った以上に飲める状態で、多少バランス面の問題はあるものの、カロン・セギュールの持つ本質は十二分に伝わる程よい仕上がりとなっています。
ハッキリしたネガティブ要素ではありませんが、抜栓直後から漂う、発酵中の味噌的と言うか、大豆風味と言うか、どことなく田舎の納屋を思わせる古ぼけた香りがあり、根本的な「固さ」を感じるコアの資質が、重厚なタンニンや想像以上に陽的な果実味(小振りな1990年的果実味)とはまったく別指向で存在し、時間を経ても決して相容れることがなさそうな立ち振る舞いなので、どうしても全体的なバランスの悪さが気になります。しかし、翌日になると(デキャンタージュ済み)想像していなかった一体感が生まれ始め、融合レベルとまではいかないものの、魅力的な果実味と強固なタンニンによる並走ハーモニーが楽しめる状態にまで昇華してくれたので、意外なほどに「本質的な固さ」は気にならなくなりました。
各要素は十分評価できるレベルで、総じて「良いものを持っている」印象ではありますが、明確にひとつの方向を目指していないこともあり、残念ながら兼ね備えたポテンシャルをフルに発揮できていないような傾向にあるとも言えます(ピースさえ噛み合えばもう少し高い評価が得られそう)。価格高騰の影響もあるので、あまり一般的にお薦めできるようなスタイルではありませんが、格付けボルドーを多数経験し、カロン・セギュールに対しての理解度が高い人であれば、最終的にはそれ相応の満足度が得られると思うので、選択したとしても決して損をするようなことはないと思います。
(2008/02)