- Good Quality -
造り手のベランがラトゥール家の親戚と結婚したことで、1987年にルイ・ラトゥールからシャンベルタンの区画を引き継ぎます。現在では、醸造を担当するフィリップ・シュロンによって、現代的な新生代流シャンベルタンを目指し変革が行われているようですが、そういった方向性が具に伝わる世界観となっているのが印象的です。
抜栓直後、5〜10分程度で素直に楽しめる表情が広がり、赤系果実のしっかりとした魅力が、いたって文句のない「美味しさ」として伝わってきます。方向性そのものが「ブルゴーニュらしさ(シャンベルタンらしさ)」というよりも、どことなくカレラやオー・ボン・クリマなどを彷彿とさせる「ブルゴーニュを意識したニューワールド(カリフォルニア)のピノ」といった方向性なのが多少気になりますが、それでも素直に美味しく飲めるという事実は、それはそれで非常に魅力的な側面だと言えます。
翌日に持ち越すと指向性に変化が現れ、本来のブルゴーニュらしさの強調、ミネラル感や質実さといった側面に対して果実味が大幅に減衰する傾向にありますが、と同時に、どこか古風な風味が漂いはじめ、その体躯サイズと相まって頼りなさや儚さも垣間見えはじめます。その後更に時間が経過すると、酸を主体とした枯れた世界観へと推移していくので、ある意味、将来に渡っての成長曲線と表情の推移が見て取れる状態だとも言えます。
シャンベルタンというグラン・クリュとしての威厳や存在感、自己の主体性や堅持力がやや弱いということもあり、相対的には抜栓日に見せる「魅力的で抗う必要のない素直な美味しさ」を全身で享受した方が、飲み手にとってはより良い結果が得られるような印象ではあります。とはいえ、シャンベルタンでこの価格帯ということを考えると、細かいことはさておきそのお買い得感は非常に高く、更に世間の評価も非常に高いとなると、知名度が低く価格が抑えられている間に是非楽しんでもらいたい、というのが実情だと言えそうです。
(2013/01)