特別特集「モレ・サン・ドニ」
北隣に「ジュヴレ・シャンベルタン」、南隣に「シャンボール・ミュジニー」と、より著名な2つのアペラシオンに挟まれる形で位置する小さな村が「モレ・サン・ドニ」。ジュヴレ・シャンベルタンからグラン・クリュ街道を南下すると、あっという間に過ぎ去ってシャンボール・ミュジニーに到達してしまいますが、その地味な存在感とは裏腹に、その実、村の畑の「約30%がグラン・クリュ」という優れたテロワールを有していることや、そのテロワールを実直に具現化する「デュジャック」「ポンソ」「アルロー」と言った優れた生産者がいること、そして近年、ドメーヌ・ド・ラルロから引き抜かれた「ジャック・デヴォージュ」が醸造責任者となったことで話題となった、モレ・サン・ドニの象徴とも言える偉大な「クロ・ド・タール」の存在など、世の中の人気や知名度とは相反する素晴らしいワインが数多く産出されています。
グラン・クリュは一部で村の中央付近にある集落を囲むように位置しているものもありますが、それでもプルミエ・クリュとヴィラージュも含め、いずれの区画もほぼ北から南に順番に並んでいるので、モレ・サン・ドニを構成する固有のテロワールが非常に理解しやすいという大きな特徴があります。大まかな特徴として、村の北部に行くほどジュヴレ・シャンベルタンに近い表情となり、骨格や力強さと言った男性的な指向性がより強くなります。逆に村の南部に行くほどシャンボール・ミュジニーに近い表情となり、フィネスやエレガントと言った女性的な指向性が強くなります。村の中心付近のクリマや、各所のクリマをバランスよくブレンドしたものであれば、ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーの特徴を組み合わせた折衷型になる傾向にあります(村としてのスタイルは男性的)。全体的に派手さはないものの、逆に素朴で質実なワインが多いというのが美点でもあり、相対的に価格が抑えられているということ、そしてブルゴーニュという土地が持つ「固有のテロワールの基本」を素直に学ぶことができることなど、ワイン愛好家にとって現実的なメリットが多く存在しています。
モレ・サン・ドニのプルミエ・クリュは、村の集落がある部分を除き、北に隣接するジュヴレ・シャンベルタンから南に隣接するシャンボール・ミュジニーまで、南北を縦断するように細い区画が順番に並んでいます。北端にある「オー・シェゾー」「オー・シャルム」「クロ・デ・ゾルム」、中央付近にある「レ・ミランド」「レ・ブランシャール」、南端にある「レ・リュショ」「ラ・ビュシエール」など、それぞれのエリアを代表するクリマを同時に飲み比べれば、固有のテロワールを素直に理解することができます。特に同一生産者、同一ヴィンテージであればその違いはより明確になり、教科書的で質実な造りを行うアルローであれば、北端からオー・シェゾー、中央付近からミランドとブランシャール、南端からリュショと、満遍なく各エリアごとに単一クリマのワインを造り分けているので、モレ・サン・ドニの全体像を理解したい場合は最適解と言えるかもしれません。
モレ・サン・ドニに限らずブルゴーニュという産地全体に共通する大まかな特徴が、西に行くほど標高が上がり、東に行くほど標高が下がり斜面が平坦になる、なだらかな丘陵地になっているということです。一部で例外はあるものの、基本的に標高が最も高い区画は「ヴィラージュ」と「プルミエ・クリュ」で構成され、斜面の中腹に当たる部分が「グラン・クリュ」と「プルミエ・クリュ」、そしてその下の緩斜面が再び「ヴィラージュ」、そして最後の平地部分が「レジョナル」となります。それぞれの最も大きな境界線となるのが「グラン・クリュ街道」と「県道974号」で、各村のテロワールをより明確に反映しているのは、基本的に「県道974号よりも西の区画」、そしてより高い品質を誇るのが「グラン・クリュ街道よりも西の区画」となります。また、標高の高い西側へ行くほどミネラルや硬質感が強調される傾向にあり、逆に東側の平地に行くほど果実味の方が強調される傾向にあります。
モレ・サン・ドニの中で最も多様性があり、かつ、ブルゴーニュ全体で見ても稀有な存在となっている区画が「モン・リュイザン」。村の北西端にあり、ジュヴレ・シャンベルタンとの境界に位置するこの区画は、標高が最も高い部分が「ヴィラージュ」、そのすぐ下が「プルミエ・クリュ」、さらにその下が「グラン・クリュ(※1)」と、すべての格付けを内包しています。また、ブルゴーニュで唯一「アリゴテ100%のプルミエ・クリュ(※2)」が認められているという非常に珍しい区画でもあり、実際にポンソが「クロ・デ・モン・リュイザン」として2005年からアリゴテ100%のプルミエ・クリュをリリースしています。
※1)グラン・クリュのモン・リュイザンについては、あくまでも「クロ・ド・ラ・ロシュを構成するひとつのリュー・ディ」となっているので、基本的にはモン・リュイザンの名ではなく「クロ・ド・ラ・ロシュ」の名でリリースされています。畑の主な所有者は、ポンソ、ユベール・リニエ、デュジャック、ピエール・アミオ、ルロワ、レシュノー・フィリップなど。
※2)他にもコート・シャロネーズの「ブーズロン」が、「アリゴテ100%のヴィラージュ」として例外的に認められています。
グラン・クリュ Grands Crus
- クロ・ド・ラ・ロシュ Clos de la Roche
- モン・リュイザン Monts Luisants
- ├レ・ジュナヴリエール Les Genavrières
- ├クロ・ド・ラ・ロシュ Clos de la Roche
- ├レ・モシャン Les Mochamps
- ├レ・フロワショ Les Froichots
- ├レ・フルミエ Les Fremières
- └レ・シャビオ Les Chabiots
- クロ・サン・ドニ Clos Saint-Denis
- ├レ・シャフォ Les Chaffots
- ├クロ・サン・ドニ Clos Saint-Denis
- ├カルエ Calouère
- └メゾン・ブリュレ Maison Brûlée
- クロ・デ・ランブレイ Clos des Lambrays
- ├レ・ブショ Les Bouchots
- ├クロ・デ・ランブレイ Clos des Lambrays
- └メ・ランティエ Meix Rentier
- クロ・ド・タール Clos de Tart
- ボンヌ・マール Bonnes-Mares (Les Bonnes Mares)
Domaine Coquard Loison-Fleurot
Domaine Coquard Loison-Fleurot
プルミエ・クリュ Premiers Crus
- モン・リュイザン Monts Luisants
- レ・ジュナヴリエール Les Genavrières
- レ・シャフォ Les Chaffots
- コート・ロティ Côte Rotie
- コート・ロティ Côte Rotie
- オー・シャルム Aux Charmes
- オー・シェゾー Aux Cheseaux
- クロ・デ・ゾルム Clos des Ormes
- レ・シャリエール Les Charrières
- レ・ファコニエール Les Faconnières
- レ・ミランド Les Millandes
- レ・シュヌヴェリ Les Chenevery
- ラ・リオット La Riotte
- ラ・グリュアンシェール Les Gruenchers
- ル・ヴィラージュ Le Village
- レ・ブランシャール Les Blanchards
- クロ・ボーレ Clos Baulet
- クロ・ソルベ Clos Sorbè
- レ・ソルベ Les Sorbè
- メ・ランティエ Meix Rentier
- ル・ヴィラージュ Le Village
- レ・リュショ Les Ruchots
- ラ・ビュシエール La Bussière
Georges Lignier et Fils
Domaine Ponsot [Web Site]
ヴィラージュ Villages
- モン・リュイザン Monts Luisants
- ピエール・ヴィラン Pierre Virant
- ラレ・フロワ Larrey Froid
- ラ・ビドード La Bidaude
- レ・ラレ Les Larrets
- アン・ラ・リュ・ド・ヴェルジィ En la Rue de Vergy
- リュ・ド・ヴェルジィ Rue de Vergy
- ル・ヴィラージュ Le Village
- ル・ヴィラージュ Le Village
- ル・ヴィラージュ Le Village
- ル・ヴィラージュ Le Village
- ル・ヴィラージュ Le Village
- ル・ヴィラージュ Le Village
- ル・ヴィラージュ Le Village
- アン・スーヴレ En Seuvrey
- オー・シェゾー Aux Cheseaux
- クロ・デ・ゾルム Clos des Ormes
- レ・ブラ Les Brâs
- レ・シャン・ド・ラ・ヴィーニュ Les Champs de la Vigne
- コルヴェ・クルニーユ Corvée Creunille
- レ・クレ・ジヨン Les Crais Gillon
- レ・エルボット Les Herbuottes
- レ・シュヌヴェリ Les Chenevery
- バ・シュヌヴェリ Bas Chenevery
- レ・コニェ Les Cognées
- クロ・ソロン Clos Solon
- レ・クレ Les Crais
- トレ・ジラール Très Girard
- レ・シオニエール Les Sionnières
- レ・ポルー Les Porroux