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完全にサンジョヴェーゼらしい無骨さや孤高さからは脱却し、抜栓後最初の一杯からすぐに楽しめるような融和なスタイルへと変貌を遂げています。2004年あたりから変化が見られたこのスタイルへの変遷も、遂にある程度のところまで行き着いた感があったりしますが、良くも悪くも「時代の流れへの順応」といえる変化であり、この徹底した中庸感から生じる特有の「中庸美」は、ロッカ・グイッチャルダ云々ということではなく、バローネ・リカーゾリ流の選択として受け入れる他ないのかもしれません。
もはやキャンティ・クラッシコというよりもカザルフェッロのようなIGT的な立ち振る舞いで、サンジョヴェーゼらしさとはひと味違う果実味や仄かなMLFっぽさにリゼルヴァ特有の苦みが加わったような、「DOCらしさ」+「バローネ・リカーゾリらしさ」+「皆が望むスタイル」をそのままのバランス感で具現化したような内容になっています。うまく調和しているとも言えますが、そのあたりはあくまでも醸造技術によるものであって、あまり本質を表しているわけではなく、翌日に持ち越すよりも抜栓日の方が良い傾向にあるなど、やはり大衆向けといった思惑が見て取れます。
1999年や2003年にみられたような、剛直なロッカ・グイッチャルダ像はもはや皆無と言えるので、昔のスタイルが好きな人にとっては軟弱すぎて飲むに値しないとすら感じるかもしれませんが、それでも前年よりもスタイルとしての完成度は向上していることや、2007年という作柄も関係しているのか、以前よりも若干価格が手頃になっているようでもあるので、相対的なお買い得感や満足度は従来の水準をまだ維持しているようにも感じられます。この間口の広さをどうとるかは人によって判断が別れそうですが、決して悪いワインではないので、日常で飲んで素直に楽しめるキャンティ・クラッシコ(リゼルヴァ)としては、なかなか良い選択肢になると思います。
(2011/05)