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オーバーチャーの方向性としては「クラシックなボルドースタイル」を目指していて、セパージュはまさに「ボルドー・スタイル」と言える、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、プティ・ヴェルド、マルベック、によるブレンドとなっています。なお、今回のボトルはちょうど7年前に試飲したものと同じロットなので(同じ時にオーパス・ワン・ワイナリーで入手)、純粋に瓶熟成による経過推移を計り知ることが出来る結果となりました。
やはり前回試飲時よりも明確に熟成が進んだ世界観となっており、青さ、若々しさ、樽の焦げ風味等は特に感じられず、適度な飲み頃感のある魅力的な表情を生み出してくれています(まさに王道的ボルドースタイル)。7年前の印象通り、一定の瓶熟期間を経ることでオーヴァーチャーが持つ魅力的な表情が表出するまでに昇華されていましたが、その反面、各葡萄品種それぞれのポテンシャルの差も明確に現れています。本質的な固さや甘美な葡萄の甘さを感じると思いきや、緩やかな体躯や酒精強化ワインのような枯れた(ヒネた)表情等が流れ込んできたりと、若さと古さが相まった、まさに玉石混淆的な「とにかく手駒を全部詰め込んでみた」という一種独特の世界観でもあるので、手放しに喜んでいいのかどうかはやや疑問も残ります。抜栓日に魅力が全開になりピークが訪れるものの、翌日に持ち越すとまさに「祭りの後」といった儚げな世界観が広がることからしても、あくまでも「オーヴァーチャーはオーパス・ワンの副産物」といったところなのかもしれません。
基本的にはオーパス・ワン・ワイナリー直販ワインという立場があるので、日本での流通価格は非現実的なものになっていますが(正直なところコストパフォーマンスはかなり悪い)、ただし、オーパス・ワンの血脈を感じる仕立ての良さと素直な美味しさは十二分に評価出来るレベルなので、ドル安な昨今の事情を考えると、仮に現地に赴くことがあるとするならば、入手するだけの価値はあると思います。