- Good Quality -
ファースト・ヴィンテージとなる2000年から話題沸騰、既成概念にとらわれない独創的な発想で造られる、「クレイジー」という意味の名前を持つ「テスタマッタ」です。
今年でちょうど10年が経過するということで、5年前の試飲時と同一ロットのボトルを久しぶりに抜栓してみました。抜栓日は近づきやすく、翌日以降に身が引き締まる、といった指向性は同一ではあるものの、ポテンシャルがつぶさに感じ取れるような強固な酒質、そして2000年とは異なる品位ある佇まいが印象的だった5年前の試飲時とは異なり、かなり率直ではっちゃけた世界観へと変化していました(やや驚き)。
思った以上に抜栓直後から素直に楽しめる表情で、キュートで甘酸っぱさがありながらも凝縮した彩度の高い果実味が印象的で、どこか2000年のテスタマッタやカザマッタにも類似するような駄菓子的な安直スタイルなのがやや気になります(といっても凝縮はしている)。ブラインドだと、2k円レンジの新興スペイン系ワイン(品質重視系のお手頃感あるワイン)かと思ったりもしましたが、例のごとく翌日に持ち越すとグッと体躯が引き締まり、安直さが抜けつつ表情に品位が出始め事態が好転します。多少明快かつシンプルになり重厚さも特に感じられませんが、それでもやはり「浅いのか深いのかよくわからない」という資質は根底に残っているので(ある種この時代の過渡期的スタイル?)、やはり「全貌が露になるよりも不明な部分が多々残る方が良い(結果論的に)」といった傾向にあるのかもしれません。
指し示すスタイルや飲み手の嗜好はともかく、表層的に感じる味としてはいたって普通に美味しく、そしてそこに一定の魅力があるのも事実です。ただし、かなり尖ったスタイルであるのと同時に、対価として支払う必要のある金額が現実的なものではないので、まさにその名の通り「テスタマッタ=クレイジー」という世界観をポジティブに受け止める人向け(ニッチ向け)といったところなのかもしれません(決して悪くはないがお薦めもし難い独特の世界観?)。
面白い世界観なので、現実的な価格帯であればかなりお薦め度が高くなりそうですが、そのスタイルに反して、思いのほかコアには質実なサンジョヴェーゼ気質が鎮座していることもあり、表面的な要素はあまり重視せず本質に注視する方がより良い結果が得られそうな印象があります。グラスに関しても、大振りなボルドー系のグラスを使用すると安直でポッテリした表情が強くなりがちなので、キャンティ・クラッシコ系の細身のグラスを使用して、ポテンシャルや意思をより明確に引き出す方向性をお勧めしたいところです。
(2006/11、2011/11、2021/11)