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ファースト・ヴィンテージとなる2000年から話題沸騰、既成概念にとらわれない独創的な発想で造られる、「クレイジー」という意味の名前を持つ「テスタマッタ」です。
メディア先行型で話題には事欠かないテスタマッタですが、口に入れた当初の印象はまさに「カザマッタ」。見据えた指向性や表情、その振る舞いまでも同質同種で、良くも悪くもひとつのスタイルを指し示していると言えます。基本姿勢はカザマッタと同等でありながら、凝縮度、果実力、ポテンシャルなどがひとつ高い次元に位置しているので、同じ延長線上にある異なるレンジのワインという印象にピッタリ当てはまります。
カザマッタのスタイルが好みであれば、テスタマッタに関しても素直に楽しめるのは間違いありません。しかし、その独特の醸造法からか(醸造責任者はアルベルト・アントニーニ)、かなり抽出に力点が置かれたようなスタイルで、「アタック:フィニッシュ=9:1」という程のわかりやすさがあり、余韻を楽しむような飲み方はできないので注意が必要です。フィニッシュの弱さがやや気になるものの、それでも従来の抽出系ワインとはかなり指向が異なる独特の表情を持つので(カザマッタ同様不思議なフレッシュさがある)、「新世代ワイン」と言われれば納得するしかありませんが、正直なところ個人的には「いたって普通のレベルのワイン」だと感じます。
サンジョヴェーゼ80%、コロリーノ、カナイオーロ・ネーラ、モスカート・ネーロ20%というセパージュですが、「サンジョヴェーゼワイン」ではなく「ビービー・グラーツのワイン」という印象を受けるので、ある意味「好みがハッキリ分かれるワイン」と言えるかもしれません。カザマッタ的資質を見せる抜栓日の印象だと、とてもお薦めできるようなレベルのワインではないと感じますが、翌日以降に持ち越すことで本来のポテンシャルが表出し始めるので、最終的には「あながち悪くない…いや十分良質なワインかも!?」と、かなり印象が推移します。
懐が狭いのか広いのかよくわからない、こういったところまでもカザマッタと同様ですが(ポテンシャルはありそう)、そうは言っても「良質だが価格に見合ったワインではない(いわゆるマーケティング主導ワイン)」ということだけは事実なので、「ファースト・ヴィンテージ」「話題性」「バックグラウンドストーリー」「ラベル飲み」こういった付随価値を重視し、「ビービー・グラーツ」というひとつの「ブランド」を楽しめる人でなければ、価格に見合った満足度を素直に得ることは難しいと思います。
(2006/11)