- Recommended -
日本向けに造られた2007年の「キュヴェ V」は、セントラル・コーストとマウント・ハーランのブレンドとなっていましたが、こちらのキュヴェはすべてマウント・ハーランの葡萄のみで造られます。その内訳は、ライアン・ヴィンヤードが69%、マウント・ハーランの若木が31%で、フルボトル換算でトータル13,464本のみ生産されています。
カレラらしい魅力と構成力は健在ですが、その指向性は既存のアイテムとはやや異なるかもしれません。セントラル・コーストやキュヴェ Vにも共通する明快な果実の甘味は確かに存在しますが、決してその点が主張しすぎることはなく、あくまでも上位のマウント・ハーランらしい構造や解像感ある表情主体で構築されているので、時間とともにその質実さがしっかり伝わってきます。その全容は難なく手中に収まる範囲の規模となっていますが、若木ベースの割にはしっかりとした表情があり、既に程よく熟れていることもあってか抜栓後1時間程度で綺麗に開花してくれます。翌日に持ち越すとやや張り(緊張感)がなくなる傾向にありましたが、衰えるというほどではなく、あくまでも「腰を下ろして落ち着いた」といったレベルの推移だったので、そう大きな問題になることはないと思います。
質実さは感じるものの素直に楽しむべきスタイルであり、明確な構成力やポテンシャルでガッツリ勝負するようなタイプではありませんが、味覚で感じる表面的な美味しさ以上にじゅんわりと伝わる魅力、旨味、世界があるので、カレラのワインを堪能するという点においてはちょうど良いスタンスだと言えるかもしれません。マウント・ハーランのみで構成されているということもあり、キュヴェ Vよりも高めの価格帯になっていますが、もし1本のみ選ぶということであれば、個人的にはこちらをよりお薦めしたいところです。
(2010/04)