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カレラにおける最も新しいシングル・ヴィンヤードがこの「ライアン」。1979年からカレラのヴィンヤード・マネージャーとして腕を振るっていた「ジム・ライアン」の名前がその由来となっています。
ライアン・ヴィンヤードの広さは合計13.1エーカーで、上部9.4エーカーの植樹が1998年、下部3.7エーカーの植樹が2001年となっています。2006年の収穫量は3.29トン/エーカーと低収量で、フルボトル換算で2,155ケースが生産されています。
69%のライアン(に適さなかった葡萄?)がブレンドされた同年のキュヴェの指向性を考えると、思いのほか早くから楽しめる系譜が想像されますが、実際には単にそれだけでなく、より質実で上のクラスを感じる世界観もしっかり披露してくれます。キュヴェよりも多少時間はかかりますが、それでも抜栓後数時間でキッチリ魅力が開花し、その日のうちに存分に楽しむことが出来ます。果実系の陽的要素はやや控えめになりますが、そのぶん硬質感やミネラル系が生み出す堅牢性資質が増加し、より軽快でフワリと舞う佇まいや、水平方向への広がり感など(厚みは控えめ)、より評価できるポテンシャルが多々ある印象となっています。アルコール度数は14.5%と、数値的にはキュヴェとまったく同じですが、それでも実際に受ける印象は数値以上のものがあり、素直に魅力が溢れる系譜といっても気軽にグイグイ飲むには多少抵抗があるかもしれません(勢いで飲むと後が恐いかも!?)。
翌日に持ち越すと、予想通り熟れた表情が増す傾向にあり、高アルコールと過熟果実風味による酒精強化系の風味や、仄かに退廃的な姿が脳裏を過ることもありますが、それでもマウント・ハーランらしい格を感じる構成力のおかげでその本質的な魅力は健在なので、この指向性の変化が特に問題になることはないと思います。
価格が高くやや手が出し難い傾向にあるので、基本的には「普段からニューワールドのポテンシャル系ワインを飲み慣れている人向け」と言え、一般層に対してはより手軽に試せるキュヴェの方がお薦め度は高そうです。タンニンが豊富だった2005年のライアンとは随分印象が異なりますが、現実的に「今飲んで楽しみたい」という場面においては2006年の方が分がありそうなので、このあたりは適材適所で使い分けていけば良いのではないでしょうか。
(2010/04)