- Good Quality -
ロー、ミッド、ハイ、どのレンジにも満遍なく各要素が込められ、フラッチャネッロらしい淡々としたサンジョヴェーゼの表情と、いたって現代的で堅牢性ある体躯がうまくマッチしています。ややあっけらかんとした傾向にもありますが、これまでに感じたフラッチャネッロ像の「平均的スタイル(表情)」と言えるような側面もあり、1996年、2000年、2001年あたりの持つ表情や資質がそれとなく脳裏を過ります。
抜栓日の印象は良くも悪くも「フラッチャネッロらしい」といったものでしたが、一転、翌日に持ち越すとコアの質実さや葡萄の持つエネルギーなど、良質な側面が徐々に出始めます。昔は飲めるようになるまで時間がかかると言われたフラッチャネッロでしたが、近年は思いのほか早くから飲めてしまうこともあり、今回は危うく抜栓日の姿だけを見て過小評価してしまうところでした。本質としての佇まいに大きな変化はありませんが、それでも時間を与えることでキラリと光る素性の良さを垣間見せてくれるので、今から飲めるといっても決して慌てず、その真贋が見極められるようになるまでもう少し置いておく方が結果的にはより多くのものを引き出せそうな気もします。
基本的に派手さや外向的な表情で攻めるスタイルではないので、分かりやすい魅力を求める人には向いていないかもしれませんが、それでも2004年に感じた「何かがおかしい」といった異質な違和感は特に感じられないので、多少価格が下がっていることからしても個人的にはこの2005年の方をよりお薦めしたいところです。タイトな体躯に強固なタンニンの収斂さが加わりますが、それでもそれをポテンシャルとして前向きに受け入れられる程よい手綱捌きでもあるので、まずは今飲む用、そして数年後飲む用、さらに10年単位の熟成用と、数本ストックしておくとより一層楽しめそうな印象でもあります。
(2009/12)