- Good Quality -
2004年という恵まれたヴィンテージに加え、ワイン・アドヴォケイトによる非常に高い評価などからして(実際に評価を行ったのはパーカーではなくアントニオ・ガッローニ)、その期待も非常に大きく膨らみますが、残念ながら最初の一口から即座に「何かがおかしい」とただ困惑する結果になってしまいました。
当初はやや閉じ気味な印象で、全体を鈍く低彩度の靄がかかっていましたが、30分〜程度経過させることで徐々に表情が露になっていきます。トータルで見ると、適度な纏まり感とそれなりの品位が感じられる、コンパクトな表情から生まれる美点と世界観がそつなく構築されていると言えますが、とにかく気になるのが「ごわついた酸」の存在で、他要素とのバランス云々ということではなく、その性質、質感そのものから伝わる「違和感」が常に気になり、どこかひっかかりを覚えます。
数日単位で時間を経過させることで、コンパクトで地味ながらもベースとして存在する良質さ(フォントディらしさ、その血統感)が垣間みれるようになりますが、それでもごわついた酸だけはどうしようもなく存在し、ナチュラルな酸の伸びの欠如した「人工感」溢れる異質さがただ虚無感となって居残り続けます。どこか、最初の「ボタンの掛け違い」が最後まで足を引っ張り、結果として決定的なダメージとなって現れているようにも感じますが、酸を楽しめないサンジョヴェーゼワインほど悲しいものはないので、どうしてもガッカリ感の方が強くなってしまいます(1996年に近い種のガッカリ感?)。
どうもフラッチャネッロというワインはヴィンテージ毎に当たり外れの差が激しいように感じますが、ハイエンドワインらしくその価格はおいそれと手が出せるレンジにはないので、正直なところもう少しその名声に見合う「安定した世界観」を構築して欲しいと切に願いたくなります。本質的な立ち位置や表情、そして向かう道筋など、今のままではあまりにも自由気侭なので、フラッチャネッロらしさとは何か?といったあたりを熟考し、そのうえでヴィンテージスタイルの表現や市場の望むスタイルなどを取り入れていって欲しいところです。
(2009/10)