- Good Quality -
ファースト・ヴィンテージとなる2000年から話題沸騰、既成概念にとらわれない独創的な発想で造られる、「クレイジー」という意味の名前を持つ「テスタマッタ」です。
ややタイトながら、その中にスッと高く立ちのぼる酸があり、軽妙さと体躯の堅牢感による対比が最初の印象として残ります。脳裏に残るテスタマッタのイメージとは随分かけ離れた印象ではありますが、ある意味「素直にサンジョヴェーゼらしい」とも言えるので、ともすると期待を膨らませすぎた故の印象なのかもしれません。しかし、突如として表情が一変するのがテスタマッタ。案の定、今回も2日目にして興味深い変化を見せてくれます。
やや虚無感があった抜栓日とは異なり、翌日になると同年のグリッリを彷彿とさせるような陽的要素が生まれ、時間とともに甘い果実の魅力が増加していきます。さらにじっくり時間をかけると、高アルコール系のトロミある甘味へと昇華し、飲み手など眼中にない歩調で迷う事なく我が道を突き進んでいきます。
3日目になりボトルの下の方になってくると、今度はコアに沈む痺れるようなタンニンや樽的な苦みなど、数多の重量要素が入れ替わって目立つようになります(熟成によって熟れてきているものの、それでもまだ奥の方で燻っている印象)。動きや変化は比較的緩やかですが、終わってみると転調続きのストーリー展開が止めどなく繰り広げられた印象があり、その自由な展開は「天真爛漫」というより「はっちゃけた」傾向にあると言えます(とはいえ決して派手ではない)。迷いのない自由な振る舞いをどう受け取るかで評価が変わってきそうですが、若干飲み手を置き去りにするかのような傾向にもあるので、もしかすると子供を暖かく見守るような「親心」が多少は必要なのかもしれません。
ポテンシャルやエネルギーそのものは十分評価できるものを持っていますが、構築される世界としては「良質なワイン」というより「かなり面白いワイン」という類いのもので、同年のグリッリが持つ要素や表情をピンポイントで増幅させたような、ある種の突き抜けた振幅感が印象的でもあるので、どちらかというとビービー・グラーツのワインを幅広く体験している人の方がよりポジティブに楽しめると思います。半額で、しかも普通の人が普通に飲んで楽しめたグリッリのことを考えると、積極的に選択する理由を見出し難いのは確かですが、2000年、2001年、そしてグリッリなど、これらとはまたひと味違った系譜の面白さを披露してくれるのは確かなので、懐に余裕がある人であれば飲んでみるのもまた一興と言えるかもしれません。
(2008/11)