- Very Good Quality -
近年多大な資本が投下されるボルゲリにおいて、唯一地元家族としてワイナリーを興し成功したのが、このワインの造り手「レ・マッキオーレ」です。1999年のパレオは、カベルネ・ソーヴィニヨン85%、カベルネ・フラン15%というセパージュで造られますが、2001年からはカベルネ・フラン100%のまったく新しいワインとして生まれ変わっているので、このスタイルのパレオが楽しめるのは、翌年に造られた2000年までということになります。
香りの多様性や方向性はグラッタマッコに近いものがあり、凝縮感ある重厚なボディだけに頼らず、しっかりイタリアらしい酸味を基調としているあたりにも(不思議とサンジョヴェーゼ的)、どことなく近い世界観を持っているように感じます。やや重心が低めで、どっしりと腰を構えた安定感ある体躯に現代的醸造技術の効用を感じますが、適度なボディサイズにキュッと締まった酸が縦方向に流れ行き、指し示す方向としてはやや土着的な傾向にあるので、誰が飲んでも美味しいと思えるようなグローバルスタンダードスタイルとはやや異なるかもしれません(分かりやすい果実味で押すスタイルではない)。故に、フランスワイン派やニューワールド派な人よりも、純粋にイタリアワインを好む人の方が素直に楽しめると思います。
いたって質実であり、加えて美味しく飲めるものの、やや能力を持て余してる感があり、独自性やワインとしての完成度はまだ半歩足りないようにも感じるので、サッシカイアやオルネッライアといった同じボルゲリワインと比較すると若干物足りない部分が見え隠れしますが、それはより高いレベルでの話であり、このクラスとしては十分評価できる水準をクリアしているので、同時比較しない限りはそれほど大きな問題にはならないと思います。ただし、カベルネ・ソーヴィニヨンがベースとなったパレオは今後造られないので、より高い位置に到達した状態を堪能することが事実上不可能となり、結果的に「未完のまま終わる」というやや残念な印象が残ります(とはいえ、カベルネ・フランによる新しいパレオは既に高い評価を得ている)。
タンニンが豊富で、時間をかける程に収斂性が増す傾向にありますが、造りの良さと安定感のおかげで、大きく暴れるようなことはありません。今飲んでも楽しめるだけの表情は見せてくれますが、より長期的に熟成させられるだけのポテンシャルも秘めているので、「故エウジェニオ・カンポルニが手掛けたパレオ」として、記念碑的な意味合いを含めてストックしておくことも十分可能です。
(2008/02)