- Very Good Quality -
その業績を称えられ、単独のDOCを与えられるまでになったイタリアを代表するワインであり、ボルゲリという優れた地の可能性をいち早く見いだした伝説的ワインでもあります。1998年は暑かった年ですが、ワイナートの「エレガント・イタリアンワイン・ベスト20」に選ばれるなど、近年散見される濃厚一辺倒なスタイルとはまったく異なる、ボルゲリがボルゲリたる所以の本質を垣間みれるような質実さに富む内容になっています。
今回の1本は状態がかなり良かったこともあり、こちらが赴きさえすれば、そのポテンシャルのほぼすべてを開示してくれました。抜栓日は、カベルネ・ソーヴィニヨンらしい緑系の仄かな風味がアクセントとなり、ミディアムスケールな体躯に心地よい樽使いが漂う落ち着きある佇まいが印象的でしたが、基本的に「酸」がベースとなり、落ち着いた果実味がそれを支える構造になっているので、ボルドースタイルといってもやはり「イタリアワイン」だということがつぶさに伝わります。
当初は若干の若さを感じましたが、時間とともに熟れた表情が出始め、翌日に持ち越すことで本質的に兼ね備えた力量が垣間みれるようになります。10年の熟成を経て程よく成長し、その世界観の礎は構築されていますが、このワインの一生を考えるとまだ若さが残る時期だと感じられ、強固で堅牢感がありながらも誠実なタンニンの状態を考えると、ボトルの状態さえ良ければ今後も10年以上は着実に歩み続けてくれそうな印象を受けます。
現時点でそのエレガントさを十二分に楽しめる状態ですが、表層的な味としてはあくまでも現実的に実感できる範囲内におさまるものなので、もしそれ以上の特別な何かを得ようとするならば、自らの歩み寄りプラス、サッシカイアというワインに対する何らかの思い入れが必要かもしれません。とはいえ、本質を得ようとする者に対しては快く門を開けてくれるので、優しいながらもしっかり心を掴んでくれるその力強い訴求力は、一度と言わず体験するだけの価値があるものだと言えます。
ちなみに、このワインは2002年度版のガンベロ・ロッソで最高評価となるトレ・ビッキエーリを獲得し、2001年度のワイン・スペクテイターでは年間第33位に選ばれています。
※今回試飲したのは現地流通ボトルとなっています
(2008/02)