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ニュージーランドに移住してきた曾祖父の「ジュゼッペ・ヴァリ」に敬意を表し、この地の先駆者でもあるワインメーカー「グラント・テイラー」が興したワイナリーが「ヴァリ」。オタゴが持つサブリージョン毎の個性をワインに映し出すことを目的とし、拠点となるギブストンの他にも、バノックバーン、ベンディゴ、ワイタキという4地域からピノ・ノワールを造り出しています。
ヴァリの拠点でもあり、セントラル・オタゴの西端にあるギブストンの畑で造られるキュヴェ。植樹は2000年、密植度は4,040本/ha。表土はレス土壌で0.5〜1m、下層は砂利が多いシスト土壌で構成され、セントラル・オタゴの中でも比較的冷涼な気候を持つテロワールとなります。全房発酵比率は30%、新樽比率31%で11ヶ月間の樽熟成後、無清澄無濾過でボトリング。生産本数は21,990本。
テクスチャは非常に滑らかで、抜栓直後から際立つ甘旨味がストレートに伝わってくるのが非常に印象的です。どちからというと一昔前のニュージーランドらしい表情とも言える印象で、以前試飲したピラミッド・ヴァレー・ヴィンヤーズのカルヴァートを彷彿とするような、圧倒的な魅力を放つ明快な旨味が最大の特徴でもあります。
偉大な世界観や、球体を構築するような圧倒的な完成度を誇るわけではないものの、それでもピノ・ノワールに期待するエレガントさをしっかりと堅持しながらも、ニューワールドらしい果実の充実感を良好なバランス感覚で構築していて、セントラル・オタゴという冷涼産地の持つポテンシャルを遺憾無く具現化しています。アルコールは13.5%としっかりしていて、タンニンや酸も適切な充実感を有していますが、それでも早くから最大級に楽しめる明快なスタイルを貫いているのが結果として非常に好印象で、純粋な魅力と訴求力に関してはかなり突出したものを持っている印象です。
翌日に持ち越すと、印象的な甘旨味がやや落ち着き、逆に黒系果実の充足感やタンニン、そして表層の収斂要素など、どちらかというとポテンシャルを感じる資質がより前面に出るようになるので、純粋な魅力要素としては多少穏やかになる傾向にありますが、それでも一定の熟成に耐え得るポテンシャルを感じると同時に、うまく果実味に妖艶さが出てボディとの一体感が得られるような昇華を迎えることができれば、事前の予想を超えて大化けする可能性もありそうな印象を受けます(逆に熟成によってバランスが崩れた場合は残念な結果になる可能性も?)。
(2022/07)