甲州市と山梨市の契約農家で栽培される甲州で造るキュヴェがこの「ハナミズキ」。買い葡萄ではあるものの、何度も畑に足を運んで収穫時の完熟度に気を配っているようです。醸造工程ではマセラシオンを行い、野生酵母による低温発酵、さらに丹念なバトナージュを実施し、甲州という品種が持つ風味を引き出しています。
マセラシオンを行なっているとはいえ、見た目としてはやはり甲州らしい淡い色調となっています(所謂オレンジワイン的な色調ではない)。それでも、さほどグリっぽい無彩色系ではなく、意外としっかりとした色彩を有している傾向にあります。そんな中、最も気になるのが抜栓直後から広がる「異臭」で、ワイン・ヴィーナスの赤や白はまだなんとか許容範囲内の印象でしたが、残念ながらこのハナミズキについては限度を超えている印象で、淡麗な甲州という品種で造られるワインということもあってか、結果として終始かなり異臭が目立ちます(翌日に持ち越してもほとんど変化なし)。硫黄(硫化水素)などの腐卵臭系の臭いや揮発酸に対して強い耐性がある人であれば問題ないかもしれませんが、正直、一般層に対しては訴求させるのがかなり難しい印象です。とは言え、強めのオフフレーバーを差し引き、ベースとなっているワインそのものは概ね良好で、いい意味で水のように優しく浸透する流麗な質感に、グリ系らしい程よい苦味がアクセントとなり、低いアルコール感も手伝ってスルスルと飲み進めることができます(それだけに異臭がただただ残念)。
醸造工程における具体的なSO2の添加量及び添加頻度など、詳細なデータは不明ですが、このハナミズキに限らず、全体的に奥野田ワイナリーのアイテムに共通する明確なオフフレーバーは、造り手として今後乗り越える必要がある大きな課題だと言えそうです(現状のままだと確実にクレームに繋がるレベル)。
(2022/04)