- Very Good Quality -
1982年がファーストヴィンテージとなる「グランブッシア」。良年のみ造られ、ロミラスコ、チカーラ、コロンネッロという3つの畑のブレンドによる、熟成期間の長い特別なバローロとなっています。
20年間熟成させた稀有なグランブッシアですが、ポジティブな熟成を経たロットということもあってか、以前試飲した1996年や1997年とは異なり、いたって良好な世界観が広がります。基本的には従来のブランブッシアと同じように、古典的なバローロが持つ表層的な指向性と、現代のバローロにも通じる力強さの両方を兼ね備えた傾向にあります。粒立ちの強いピリッとした苦味に、軽やかながらも明確な酸、そしてその長命さが伺い知れる充足感の高いボディと、コントラストのハッキリとした強いタンニンがベースにありながらも、果実味は十分なボリュームを有し、噛めば噛む程滲み出る甘旨味を内包しています。とはいえ、20年間にも及ぶ長期熟成により、純粋な果実の表情そのものは古酒の領域に到達していて、シェリーのような酸化熟成要素が強くなっています。それでも、1997年に感じたようなヒネた要素はなく、古酒特有な奥ゆかしい妖艶さが、しっかりとしたボディの内部で揺蕩うようでもあり、一種独特の世界観を生み出しています。
正直なところ、現代基準の観点からすると、ポテンシャル要素は高い反面バランスはあまり良いとは言えず、酸化熟成系の表情も苦手な人にとってはネガティブな要素に映る場合もあるので、純粋な点数評価としてはあまり期待はできない系統のワインだとも言えます。とは言え、逆に言えばモダンなワインでは得られない稀有な個性を持っているとも取れるので、古き良き時代の名残として一定の存在感を示してくれそうな印象かもしれません。
(2021/11)