- Good Quality -
1982年がファーストヴィンテージとなる「グランブッシア」。良年のみ造られ、ロミラスコ、チカーラ、コロンネッロという3つの畑のブレンドによる、熟成期間の長い特別なバローロとなっています。
3つの各クリュ・バローロと比較すると1.5倍近い価格帯となっていますが、世間一般の評価としては大きく二分する傾向にあり、絶賛する人とガッカリする人に別れるような印象を受けます。もしかするとそれだけ気難しいスタイル(閉じやすい?ボトル差が大きい?成長曲線が複雑?)と言えるのかもしれませんが、今回の1本に関しては、1996年というヴィンテージらしい質実さのあるスタイルではあるものの、以前試飲したチカーラやコロンネッロのような美点を明確にするタイプとは異なるものとなっていました。
ベースにあるのはやはり古典的な指向性で、体躯サイズ自体はこぢんまりとした傾向にあり、かなり酸が突出しているということもあってか、受ける印象としてはネッビオーロというよりもバルベーラといった感じでもあります。絶対値としてはタンニンも果実味もしっかりありますが、相対的に酸に隠れる形になっているので、どうしても酸以外の要素がマスキングされているかのような印象を受けがちです。酸の資質もやや古典的な指向性を有していて、クリアでのびやかなタイプとはやや異なるので、現代的なワインを飲み慣れている人にはやや伝わり難い世界観かもしれません。
ヴィンテージを理解して飲めばより実直に向き合えるとは思いますが、全体的に陰や堅な性質にあり、長期熟成を経た方がより「らしさ」が発揮されるような指向性なので、やはり「グランブッシア=通向け」というのが基本スタンスなのかもしれません(結果論か意図的かはさておき)。派手さがないので印象深くはありませんが、それでもその本質にはしっかりとしたポテンシャルが込められているので、価格を度外視すれば十分納得いく内容なのは確かだと思います。その真価を見極めるのは難しいかもしれませんが、もう少し長い目でみて、異なるヴィンテージを幅広く試してみたいというのが正直な感想だったりもします。
(2013/01)