- Good Quality -
ダリオ・プリンチッチのアイテムとしては最もお手軽なレンジに位置する「ヴィーノ・ロッソ」です(もともとは蔵の1階で営んでいた居酒屋で量り売りしていたワイン)。セパージュはメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド。
群を抜く際立った個性を持つこのロッソですが、その本質的な良質さは従来どおり、いやむしろ、以前よりもさらに進化しより突出したスタイルへと変化しているようでもありますが、結果としてより飲み手を選ぶスタイルになっているとも言えます(個人的にはポジティブに捉えたい印象)。
とにかく不思議な世界観で、葡萄を原料としているとは思えないほどの独特の果実感が印象的です。ある種、完全に古酒の世界に突入した退廃的なオールドヴィンテージと、収穫したばかりのフレッシュな果実を混然一体とさせたかのような、若さと古さを同時に確立させたような謎多き表情となっています。古風で退廃的な酸は膨大ながら、同時に濃縮果汁のような圧倒的な濃密感があり、煮詰めた梅のような甘旨味など、各要素の密度が高いこともあって絶妙なバランス感覚で成り立っています。
抜栓直後はその独特の個性がより際立つ傾向にあるので、飲み手によって好き嫌いがはっきりと分かれそうな印象を受けます。しかし、翌日に持ち越すとネガティブな要素とポジティブな要素がうまく支え合い、素直に受け入れられる良質さを醸し出すようになるので、時間をかければかけるほどに訴求力や浸透力は増す傾向にあります。全体的な方向性としては、ダリオ・プリンチッチが手がける「メルロー」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」と共通するタイプでもあるので、これらの既存のワインを経験済みな人であれば、このロッソに関しても無理なく受け入れられると思います。ただし、多くの人が思い浮かべる「一般的なワイン像」とは大きくかけ離れているので、事前にその個性と世界観を理解した上で選択する必要がありそうです。
(2019/04)