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一般的には白のイメージが強いダリオ・プリンチッチですが、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローという、モノセパージュの赤ワインも手掛けています(ブレンドのヴィーノ・ロッソも限定アイテムとしてあり)。
全体的にオレンジがかった古めかしい色調で、その独特の香りや佇まいなどは、もはや20〜30年以上は軽く経過しているような、オールド・ヴィンテージのボルドーやバローロに近い雰囲気となっています。その概要は、退廃的な古酒のヒネた風味がベースとなっていますが、その反面、果実そのものは非常に生き生きとした輝きと充実感、そして豊かなボリューム感があり、その熟度の高さと相まって異常な程に突出した妖艶さが広がります(過去のヴィンテージと比較しても圧倒的に突き抜けた世界観)。このリッチで魅惑的な表情は、飲み手の心を掴んで離さない不思議な求心力を生み出していますが、決して大衆受けするような類いのものではなく、むしろ長い人生を歩み続け、大人のゆとりを纏うスローライフな人生を送っている人に対してだけ微笑むような、数限られた秘密のご褒美といった印象を受けます。
ボトルの上の方は、琥珀的な橙色を伴うクリアな表情が主体となっているので、古酒独特の枯れた風味がやや強めに感じられますが、ボトルの下に行くについれて微細で泥土のような澱が増え、残り1/3ほどになると透明度ゼロの暗黒色となり、古酒的な枯れ要素を覆い尽くす勢いで妖艶な甘みが全体を支配します。若干舌触りは悪化するものの、一度ハマると抜け出せなくなる泥沼のような拘束力があり、快楽の極みとも言える媚薬的世界観なのが印象的です。個性が強く、古酒的な世界観が主体となっていること、また、澱が多く扱いが難しいことなど、あくまでもニッチ向けではありますが、全てのピースがハマった時に見せるその表情は、まさに桃源郷と言える領域にありそうです(個性を前向きに捉えられない人には不向きなので要注意)。
(2018/03)