- Good Quality -
1985年に創立と、ワイナリーの歴史は浅いのですが、クレリコやスカヴィーノらを通してマルコ・デ・グラツィアに出会い、91年からバローロの改革に着手しています。その後グラツィアとは袂を分かち、テロワールを表現する方向で独自の道を歩みますが、その過程で商品ラインの改定をかなり積極的に行っているので、既に存在しないバローロや、逆に新たに誕生したバローロなど、やや混乱傾向にあります。今回試飲した「レ・コステ・モスコーニ」についても、ファースト・ヴィンテージは2003年ですが、現在では既に「レ・コステ・ディ・モンフォルテ」と名前を変えています。
その名の通り、モンフォルテ・ダルバのクリュ「レ・コステ」と「モスコーニ」のブレンドで造られるバローロとなりますが、パルッソとしても「ブッシア」に次ぐバローロとして、重要なポジションに位置しています。クリュ・バローロとしての存在意義、そのエネルギーや複雑さは感じられますが、指向性としては比較的シンプルで、純粋な果実味(ある種のモダンらしさ)よりも、ネッビオーロ特有の美を感じるような「タンニンを愛でるスタイル」になっています。2006年という優れたヴィンテージとしてのポテンシャルはあまり感じられず、思ったよりもこぢんまりとしている印象ではありますが、一見シンプルなその表情も、じっくり向き合い、そのベールを一皮ずつ捲っていくことで、精緻でしっかりと組み上げられた質実な表情が露わになります。やや埃っぽいながらも甘く熟れたタンニンに、程よいアクセントとなるピリッとした苦味と辛味、そして酸、派手さはないものの、地に足の着いた構成要素によって安心して嗜むことができます。
一定のポテンシャルは有しているものの、今回はどことなく「ボトル差」として認識される部類の、やや弱いロットに当たったような印象もあり(状態は良好ですが熟成の結果がそこまでポジティブではない)、判断がやや難しい側面もありますが、素性そのものはいたって良質なので、最新ヴィンテージのような1万オーバーの価格でなければ、十分なコストパフォーマンスを発揮してくれると思います。
(2016/12)