- Good Quality -
ブランカイアがトスカーナで話題の土地「マレンマ」で造る新しいワインがこの「イラトライア」。セパージュはカベルネ・ソーヴィニヨン60%、サンジョヴェーゼ30%、プティ・ヴェルド10%。ブランカイアを代表する「イル・ブル」と比較すると、より堅牢性の高いスタイルになっています。
抜栓直後に感じられる、柔らかながらもしっかりとしたバニラ香が、以前試飲した1997年のブランカイア(現イル・ブル)を彷彿とさせます。このあたりの仕立て具合、手綱捌きはまさにブランカイアスタイルといったところかもしれません。カベルネ・ソーヴィニヨン主体のセパージュとは言え、実際にはサンジョヴェーゼらしさ(所謂イタリアらしさ)が思いのほか色濃く感じられ、堅牢かつ重厚な体躯に凛とした表情が華を添えています。アルコールが14.5%とかなり高く、さらには感覚として感じる度数以上に染み渡る傾向にあるので、全体的なバランスがとれているのにあまりグラスが進まないという、一種独特な感覚に見舞われますが、基本的には飲み手の体力を必要とする部類に入りそうです。
翌日以降に持ち越すと、本質としての主眼とも言える「堅牢性」に磨きがかかり、そこにタイトで冷淡な質感が重なることで存在感ある世界観が構築されていきます。その後4日程度まで様子を伺ってみたものの、衰えることなく淡々と在り続けていたので、潜在的には数十年単位の経過にも耐える長熟系ワインと言えるかもしれません(「熟成」というよりも「寿命」という観点)。将来はまだ期待出来るものの、現時点で既に十分堪能出来る状態で、恐らくどの熟成段階で飲んでも変わりなくその世界観を堪能出来ると思います。瑞々しさや優しさも持ち合わせてはいるものの、やや冷涼で芯の通った資質なので飲み手によっては素っ気ないと感じるかもしれませんが、内包するエネルギーは十分なものがあるので、ブランカイアという造り手のスタイルが好きな人であれば、十分納得出来るだけの満足感は得られると思います。
(2013/03)