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ファースト・ヴィンテージとなる2000年から話題沸騰、既成概念にとらわれない独創的な発想で造られる、「クレイジー」という意味の名前を持つ「テスタマッタ」です。2004年のセパージュは、サンジョヴェーゼ85%、コロリーノ15%、カナイオーロ15%となっています。
初期のテスタマッタを基準にすると、かなりスタイルに変化が起きている印象があり、もはや「深いのか浅いのかよく分からない」といった指向性は皆無で、抜栓直後からストレートに分かりやすく素直に楽しめる世界観となっています。
基軸として中心にサンジョヴェーゼらしい堅牢性ある柱が存在し、その周囲には肉付きの良い豊満で丸みのある体躯が存在していますが(ややメルローっぽい資質かも?)、誰が飲んでも普通に理解できるような庶民的立ち振る舞いではあるものの、その内面には重厚かつ緻密なタンニンが今も健在です。ただし、タンニンの強さを必要以上感じないよう微細化されていることや、それをさらに口当たりの良さがカバーしている点など、全体的に2004年という優良ヴィンテージらしいバランスの良さが全体に行き渡っているので、文句なくその存在すべてを享受することができます。
系譜としては2003年のスタイルを踏襲し更に歩を進めた感がありますが、良くも悪くも際立った作柄だった2003年とは異なり、2004年は非常に落ち着いた表情をしているので、全体を通じてかなりあっさりと纏まっている印象があります。その「クレイジー」という名前からは想像できないほど「普通」な仕上がりになっているとも言えるので(良く言うとしっかりコントロールされている)、過去最高レベルの市場評価を得ていることを考えると、多少肩すかしを食らったような感覚だったりもします。
高価格なブランドワインでなおかつ高い評価を得ているとなると、イメージとしては非常に充実した内容を持つ偉大な世界観を期待してしまいますが、実際には「いたって現実的に普通に美味しいワイン」といった内容なので、純粋なコストパフォーマンスは相変わらず微妙なものがあります。しかし、美味しさだけでなくその良質さも十分感じ取れるのは確かなので、超モダンスタイルなサンジョヴェーゼを楽しみたい人にとっては、まさに打ってつけのアイテムと言えるのかもしれません。
(2010/11)