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ファースト・ヴィンテージとなる2000年から話題沸騰、既成概念にとらわれない独創的な発想で造られる、「クレイジー」という意味の名前を持つ「テスタマッタ」です。2003年のセパージュは、サンジョヴェーゼ70%、コロリーノ15%、カナイオーロ12%、モスカート・ネーロとマルヴァジア・ネーラがあわせて3%となっています。
以前試飲した同年のグリッリの印象が残っているので、いまだ瓶熟成を必要とする強固で陰な姿を想像していました。しかし、その想像を良い意味で裏切ってくれる「端的な美味しさ」が披露され、抜栓直後から驚く程素直に楽しむことが出来ます。
2003年というヴィンテージの指向性がうまく活用されている印象があり、重く強いタンニンは総じて屈強な体躯に、完全に熟した果実は明朗快活な甘さに、そつのないバランス感でうまく世界観構築に寄与しているようで、内容の充実度やポテンシャルを明確に打ち立てながらも、なおかつ誰でも分かる魅力(=濃く甘く美味しい)を披露してくれるので、存分にこのワインの持つ良さが伝わってきます。
従来のビービー・グラーツ系ワインに散見された「深いのか浅いのかよく分からない」といった傾向は一切みられず、抜栓直後であっても翌日に持ち越した場合であっても安定した分かりやすい美味しさを披露してくれますが、その瞬間のみの満足度を引き上げてくれるような魅惑系にあることや(和食や繊細な食事には合わないかも?)、細部に注視すると若干ながら2003年的な弛みを感じることなど、決して手放しに喜べる程の完成度ではないのかもしれません。しかし、愚直なまでに披露されるその「美味しさ」を否定することは非常に難しいので、相変わらずの「高価格」にさえ目を瞑ることが出来れば、得られる満足感は必要にして十分なものとなりそうです。
(2009/11、2013/11)