- Very Good Quality -
比較的マイナーな地区から高品質なワインを生み出すことで有名な、グザヴィエ・コペルが1996年に設立したネゴシアンである「プリモ・パラテューム」の「マディラン」で、今回の1本は最高のテロワールと高樹齢の葡萄で造られる「セレクション・ミトロジア」となっています。セパージュはタナ100%、年間生産本数は僅か1,570本となっています。
インクというより墨汁を彷彿とさせるものがあり、いかにもタナらしい「強靭なタンニン」が、熟した丸い果実味と対になって独自の表情を構築しています。含有するタンニンは膨大ですが、思った以上に体躯に朗らかさが感じられ、全体としてのバランスをしっかり考えた上で舵が取られているので、向き合うのが困難になるようなイカツさはありません。
時間とともにタンニン力が増し、ボトルの底の方にもなると細かい澱とともに超絶的な収斂性が発揮されますが(口の中がギュッと引き締まって乾く)、それでも2003年の特徴なのか、それとも造り手の意思なのか、質感の滑らかさと優しいジャム系の甘味がタンニンの暴れを防いでくれるので、なぜか強い収斂性にネガティブな要素を感じません。
現状におけるスタンスとしては、同ヴィンテージのリムーとミネルヴォワのおよそ中間にあり、今楽しめる要素半分、ポテンシャル要素半分といったところです。この強靭なタンニンを基準として考えた場合、確かに「今飲むようなワインではない」とも言えますが、それでも「タナ」という品種の性格を考えた場合、しっかり熟れきるまで待つよりも、積極的に「どうやってこの膨大なタンニンのエネルギーを享受するか?」を第一に考えた方が得られるものも多そうなので、飲み手が前向きな意識さえ忘れなければ、どの熟成段階で飲んでも本質に見合う内容は十分伝わると思います。
素直に「美味しい」というタイプのワインではなく、やや通好み(マディランやタナという品種のスタイルを理解している人向け)な側面が強い傾向にありますが、兼ね備えたポテンシャルはなかなかのものがあるので、この価格帯に位置していることに対して素直に納得でき、そして希少性という大きな壁を乗り越えることができるならば、真摯に正面から向き合うことができると思います。
(2008/10)