- Very Good Quality -
カステッロ・ディ・アマが造る偉大なメルロー100%ワイン「ラッパリータ」。ファースト・ヴィンテージは1985年で、トスカーナにおけるメルロー100%ワインの流れを生み出した存在だとも言えます。
ラッパリータにはベッラヴィスタの畑の上部の区画が割り当てられ、広さは3.844ha、使用されるメルローは1982年~1985年に植樹されています(既存のカナイオーロとマルヴァジアに接ぎ木)。
既に10年以上が経過していますが、想像を遥かに超える堅牢さと威厳がビシビシと伝わり、強固なタンニン力に満ちあふれています。線は比較的細く、イタリアワインらしい精緻な酸がコアに居座る気品あるスタイルですが、一般的に想像する「メルローらしい豊満な柔らかさ」を表現するような資質ではないので、安易に構えていると打ちひしがれてしまいます。
抜栓直後は若干シンプルな様相を呈していますが、30分程度で開き始めるので、そこからはじわじわと溢れ出るタンニンを持久戦覚悟で受け止めてやる必要があります。この種のタンニン力は、どことなくアッレグリーニの「ラ・ポヤ」を彷彿とさせるものがありますが、10年強の熟成でもこれだけ厳格な表情を維持しているのであれば、潜在的ポテンシャルとしては今後さらに7~10年程度は安定して持続していきそうな雰囲気があります。ワイナートでは飲み頃が「2003〜2009」となっていますが、通常のボトルコンディションであれば2009年を大きく越えてもヘタるとは到底考えられないので、焦ってすぐに飲んでしまう必要はないと思います。
翌日に持ち越すと、余分なタンニンが融和し強固な表情がほぐれていくので、結果として果実からくる優しさが少しずつ浮上します。垣間みれる時間はやや短いものの、各要素が一体となった時に広がる完成された独自の世界観と景色にはなかなかのものがあるので、うまくポテンシャルを引き出せれば高い満足感が得られると思います。
あまりの人気によってプレミアムワインとしての位置づけがなされていますが、感じる世界観や位置するポジションを考慮すると、あくまでも「アマの見定める世界観を補完する裏舞台」といった印象を受けます。確かに単一クリュのキャンティ・クラッシコにはない魅力があるのも事実ですが、そこには「キャンティありき」の思想もみてとれるので、単純に表層的な美味しさを求める人は避けた方が無難かもしれません。とはいえ、アマに特別なこだわりや思い入れがある人にとっては桃源郷ともいえるワインなので、チャンスがあれば一度は飲んでみることをお勧めします。
(2006/03)