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カステッロ・ディ・アマが造る単一クリュ「ラ・カズッチャ」の畑は、広さが約23ha、標高が456m~530mの南向きで、使用されるサンジョヴェーゼは1967年と1975年に植樹されています。
アマはベッラヴィスタに続き、1982年にサン・ロレンツォ、1985年にラ・カズッチャ、1988年にベルティンガと、立て続けにクリュ・キャンティを世に送り出しますが、ノーマルのキャンティ・クラッシコそのもののクオリティを向上させるために、優位性が見られなくなったサン・ロレンツォとベルティンガの生産を打ち切り、1997年ヴィンテージより新たな道を歩みだしています。
1995年というヴィンテージの性格とピッタリ合うイメージですが、10年以上に及ぶ長い熟成のおかげで厳格な性質がほぐれ、その名残がキュートな果実味とうまく調和しているので、アマが見定める単一クリュ「ラ・カズッチャ」の本質が遺憾なく表現されているように感じます。
独自の世界観を構築しながらも自我を主張しないスタイルが興味深かったベッラヴィスタとは指向性がやや異なり、ラ・カズッチャの方は剛直なタンニンがビシッと通り、精緻できめ細やかなテクスチャと酸が相まった「明確な意思」を感じるスタイルとなっています。直前に試飲したベッラヴィスタはやや弱いボトルに当たった印象もあるので単純比較はできませんが、それでも長期的な視点で見た場合、少なくとも1995年ヴィンテージにおいてはラ・カズッチャの方が高いポテンシャルを兼ね備えているように感じます。
現時点での容姿から想像すると、若い間はかなり固く向き合いにくそうな印象もあるので、ラ・カズッチャの美点を真に享受するのはやや難しい傾向にあるのかもしれません。コストパフォーマンスに関しても、ノーマルのキャンティ・クラッシコの方が明らかに優れているので、アマが確立する「キャンティの概念」を掘り下げようとする人以外にはお薦めしにくいのもまた事実です。しかし、単一クリュを飲むことで理解が深まり、それによってノーマルのキャンティ・クラッシコの資質を再確認できるという一面もあるので、まだ単一クリュ未経験ということであれば、飲んでみる価値は大いにあると思います。
(2006/03)