- Very Good Quality -
バロン・フィリップが所有する3つのシャトー(ムートン・ロートシルト、ダルマイヤック(旧ムートン・バロンヌ・フィリップ)、クレール・ミロン)の内のひとつで、知名度的には3シャトーの中で最も低いと言われています。
バロン・フィリップに買収された1933年当時は「ムートン・ダルマイヤック」と呼ばれていましたが、その後1965年に「ムートン・バロン・フィリップ」と改名、さらに今回飲んだ1975年からは、翌年の1976年に他界した夫人のために「ムートン・バロンヌ・フィリップ」と改名し、その後1989年には現在の呼び名となる「ダルマイヤック」に改名しています。
今回飲んだムートン・バロンヌ・フィリップは、直前に飲んだクレール・ミロンと同様に、キャップシールやラベル等、ボトルの外見がかなり綺麗だったのですが、こちらはクレール・ミロンとは異なり、1997年にシャトーでリコルクされたボトルのようです。
抜栓直後は強烈な渋みを持ったタンニンが全面に広がり、加えて枯れたシェリー風味や細い酸味がそれぞれ自由奔放に主張し、近づくそぶりすらみせない状態となっていました。とりあえずパニエを使用し1時間30分ほど経過させてみましたが、柔らかな果実の甘みが膨らんでくるものの、やはり強烈な渋みがコアに居座っているので、今飲むにはキツいと言わざるを得ない印象です。
世界観としてはクレール・ミロンと同系統ですが、明らかにエネルギーが3割増といった感じがします。しかし、各要素が好き勝手に動き回っているので、どうにもこうにも「収拾がつかない」印象となります。リコルクの影響があるのかもしれませんが、実際には微細で大量の澱がそのままだったので、「若返えっている」というよりは「暴れて落ち着きがない」というイメージの方が強くなります。そうはいっても、翌日に持ち越すことで一気に良質な側面をみせ、クレール・ミロンと同様に甘美な果実味が全体をグッと纏めてくれるので、強烈な渋みさえなんとかなればある程度昇華し開花してくれるかも!?という期待が膨らみます(期待だけで終わる可能性もありますが…)。
1975年というヴィンテージを非常に色濃く表したタンニンが印象的ですが、約30年経過した現状でこの状態だということを考えると、正面から向き合うにはまだまだ時間が必要なのかもしれません。一般的にはそれまで果実力が持たないのではないかと危惧されていますが、今回の印象だとまだまだ余力を持って持ちこたえてくれそうな印象だったので(それでも明らかにタンニン力の方が上ですが…)、もう暫くの間はセラーに寝かせておき、飲む時はしっかり澱を沈めてデキャンタも使用することをお勧めします。
明確な「欠点」を兼ね備えているので、あまり一般的にお薦めできるワインではありませんが、コアにしっかりとしたエネルギーを兼ね備えているのは確かなので、このワイン&ヴィンテージの性格を理解しているのであれば、試してみる価値はあると思います。
(2005/11)