- Very Good Quality -
1855年に行われた格付けで、1級格付けの評価を得た五つのシャトー(ラフィット、マルゴー、ラトゥール、ムートン、オー・ブリオン)の中でも「1級筆頭」として扱われた、シャトー・ラフィット・ロートシルトの1975年産ワインです。
この時代のラフィットは、一貫性がなくボトル差が大きいと言われていますが、今回飲んだボトルに関してはまったく問題がなく、ラフィットのアイデンティティと1975年というヴィンテージのスタイルを享受できる良質なものとなっていました。
精妙さや純度を兼ね備えたフィネスあるスタイルといわれるラフィットですが、今回の1本はまさにその言葉を具現化したかのような内容で、全体的な満足度が高く綺麗に熟成した古酒だと言えます。驚いたのが、抜栓直後から素直に美味しいと感じられる状態だったことで、確かに開ききる前と後では変化があるものの、どの段階であったとしても、総じて全体に通じる世界観が楽しめるようになっています。
当初はピリッと響く胡椒的なスパイシーさを感じましたが、時間ととに熟れて馴染んでいきます。香りはかなりの複雑さをみせ、古く乾燥した木材、シェリーや老酒のような風味、黒鉛、キャラメル等々…、多くの要素が絡み合って渾然一体となっています。この類を見ない複雑さは大きな魅力で、ラフィットの世界へと誘う大きな最初の鍵になっていると言えます。このあたりを纏めた印象として、不思議と以前飲んだ1964年のバローロのような、「枯れたバローロ(ネッビオーロ)風味」と共通する何かを感じます。
ある程度の立体感はありますが、スケール自体は小さめなので、パワーや構造力といった指向性ではなく、あくまでも酸を基調とした表情に張りのあるタンニンを加えた質実さを楽しむことで、初めてトータル的に高い満足感が得られると思います。ただし、持っている力は既に終わりが見え始めている傾向にあるので、純粋な維持力そのものにはあまり期待できないかもしれません。潜在的にはまだまだ持ちこたえるだけの力を持っていそうですが、ベストな状態を考えると、今後5年程度の間に飲みきってしまう方がより高い満足感が得られると思います。
ちなみにこのワインは、ロバート・パーカーが選ぶ1975年のポイヤックにおける3本しかないベスト・ワインのうちの1本となっています(残りはラトゥールとムートン)。
(2004/11)