- Good Quality -
2018年がラストヴィンテージとなってしまった「ピサ・テラス」に代わって、この2019年がファースト・ヴィンテージとなる「ノース・カンタベリー」のピノ・ノワールがリリースされています。サトウ・ワインズの本拠地はセントラル・オタゴですが、ノース・カンタベリーはクライストチャーチからさらに北に1時間ほど行ったところにあるサブ・リージョンで、実際の葡萄は「ブラック・エステート」が所有するビオディナミの畑(ホーム・ヴィンヤード)のものとなっています。ただし、残念ながらこのノース・カンタベリーも翌2020年がラスト・ヴィンテージになるので、セントラル・オタゴ以外の葡萄で造られるサトウ・ワインズのピノ・ノワールはこの2ヴィンテージのみになります。
熟成はフレンチ・オークの古樽で21ヶ月間、生産本数は僅か2,508本(無清澄無濾過でボトリングは2021年2月5日)となっています。全体的に他のサトウ・ワインズのアイテムとは指向性が異なる印象で、コアそのものには高い熟度と充足感があるものの、スタイルとしては清涼感がより前に出た、細身で酸を主体とした系譜になっています。自然派ワインらしい佇まいが印象的で、やや紫系寄りの甘酸っぱいニュアンスや、軋みを伴うテクスチャなど、所謂ヴァン・ナチュール的な表情がより前に出ていることもあり、どちらかというと本家ブラック・エステートらしいニュアンスの方が色濃く感じる印象でもあります。ただし、コアの凝縮感には佐藤さんのこだわりの一端が色濃く反映されているので、基本的には抜栓日よりも翌日以降と、開栓後に時間をしっかり与えた方がより良い表情を打ち出してくれる傾向にあります(とは言えボトルの底の方になるとやや退廃感が出る)。
(2024/10)