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10年の熟成を経たフォンタッローロですが、同じくサンジョヴェーゼで造られるランチャと比べると、思った以上に異なる表情なのが印象的です。抜栓直後から素直に楽しめる状態で、まさに今からポテンシャルのピークに達するような傾向にあり、程よい一体感から発せされる訴求力によって十分な満足感が得られます。相対的にランチャよりも陽的で親近感があり、滑らかな質感に豊かなタンニン、そして仄かなバニラとの一体感から感じる落ち着いた甘味が心地よく、現代的な造りによる良質なサンジョヴェーゼ像が遺憾無く発揮されています。本質的にかなりしっかりとしたタンニンを内包していますが(それ故にまだ熟成も可能)、それでも従来のヴィンテージにみられたポテンシャル重視の堅牢性やある種の気難しさは影を潜め、無理なく向き合えるナチュラルな佇まいへと変化しているのが非常に印象的です。
もしかすると、熟成によって小難しさのない素直なサンジョヴェーゼ像が出来上がった可能性もあるかもしれませんが、それでも同じヴィンテージのランチャよりも間口が広くより多くの層にストレートに訴求するのは確かなので、もしどちらか一本を選ぶということであれば、こちらのフォンタッローロをよりお薦めしたいところではあります。
(2023/04)