- Good Quality -
契約栽培農家でもある余市町の木村農園のピノ・ノワールを使用し、ヴィンテージ毎の葡萄の特徴に合わせてスタイルを変化させる新しいキュヴェが誕生。ワイン造りの楽しさを表現し「蔵楽(くらら)」と名付けられています。発酵はタンクで行い、熟成はフレンチオーク樽で約8ヶ月、生産本数は僅か1,173本となります。
純粋な果実要素は控えめで、やや酢酸のニュアンスを感じる傾向にありますが、それでも全体像としては千歳ワイナリーに共通する「纏まりのある落ち着いた立ち振る舞い」と「やや陰な資質の表情」を纏っています。表層的には軽やかではあるものの、それでも造りや抽出はかなりしっかり行われている印象で、思いの外タンニンがしっかりしていてドッシリとした低重心系にあります。そして表情そのものは陰な系譜にありながらも、方向性としてはニューワールドのピノ像らしいスタイルで、じゅんわりと染み渡る旨味を感じる系譜にあるので、ポテンシャルを最大限まで引き出した場合の満足感は非常に高くなっています。抜栓直後はやや薄く要素の乏しさが気になりますが、時間とともに旨味とボディの充足感が大幅に増す傾向にあるので、現状だと抜栓後数時間から翌日に持ち越すあたりでピークを迎えそうな印象です。それ以上時間を置いてもバランスが崩れることはありませんが、やや退廃感や陰な表情が前に出る傾向にあったので、サービスする際に注意すれば特に問題になることはなさそうです。
従来のスタンダードキュヴェが、クリーン&クリアな指向性のより落ち着いた安定感がポイントになっていますが、こちらのくららは逆にノンフィルターらしい自然派に近い朴訥さが魅力でもあるので、価格自体に大きな差はありませんが、そのスタイルにはかなりの違いがある印象です(とはいえワインが持つ本質はどちらも同じ)。
(2023/03)