- Very Good Quality -
2001年にニュージーランドのマーティンボロでワイナリーを設立。今やニュージーランドを代表するだけでなく、世界基準で非常に高く評価される日本人醸造家「楠田浩之」によるピノ・ノワールです。2013年は88%を除梗かつ無破砕で、2〜10日間の低温浸漬。その後開放式ステンレスタンクで23〜27日間のマセレーションを行なっています。熟成はフレンチオークバリックで17ヶ月(新樽比率21%)、ボトリングは2014年9月9日で生産本数は7,426本となります(アルコール度数は13.5%)。
10年熟成させた初のオールド・ヴィンテージとなるクスダ・ワインズのピノ・ノワールですが、乾燥して夏らしい日々が多かった2013年というヴィンテージのスタイルもあってか、抜栓直後は特に収斂性のある軋みや固さがあり、熟成を経てもなおしっかりとした酒質を堅持している傾向にあります。同年のシラーと同じように、言われなければ10年の熟成を経ているような印象は特に受けません(当然のようにまだまだ長期熟成可能)。それでも内包する要素は全体を通してそれなりに落ち着きがあり、特に抜栓直後から一気に広がる甘い香りは非常に心地よく、そこから解き放たれる魅力はこれまでのクスダのピノと比較しても群を抜いている印象を受けます。第一印象としては、まさにニュージーらしいピノ像といった系譜にあり、香りからはシューベルトにかなり似た雰囲気を感じます。とは言え、香りの印象とは異なり実際には収斂要素がやや強めで、黒系果実寄りのミッチリとした充足感が広がります(思いの外酸も豊富)。
時間とともに程よく落ち着き徐々に開いていく傾向にあり、翌日に持ち越すと本来のクスダらしい魅惑的な果実の甘みが主要素となった、素直に楽しめる良質なピノ・ノワール像が展開されます。多くの人が想像するであろうクスダのピノらしい世界観ではありますが、それでもコアには堅牢性も同時に感じられ、表層的な分かりやすい美味しさと本質的なポテンシャルを同時にうまく兼ね備えているような印象を受けます。
ヴィンテージの影響もあってか、全体的なパッケージングやワインそのものとしての完成度としては、まだ上を目指す余地があるようにも感じますが、それでもこれまでに試飲したクスダのピノ・ノワールとしては最も可能性を感じる内容になっているのは確かで、熟成によって完全開花する可能性とその高いポテンシャルを考慮すると、基本的には早飲みするよりもしっかりと熟成させた方がより高い満足感が得られる印象ではあります。
(2023/03)