- Good Quality -
契約栽培農家でもある余市町の木村農園のピノ・ノワールを使用し、フレンチオーク樽で約8ヶ月間の樽熟成を行なっています。スタンダードキュヴェのピノ・ノワールとは異なり、熟成期間中の官能検査でより優れた結果を出した3樽のみ厳選してボトリング。ワイナリーの石蔵で保管した特別キュヴェとなります。
第一印象からとにかく穏やかで、一体感のある落ち着いた佇まいなのが非常に印象的です。基本的には清涼感のあるスッキリとした酸を主軸とし、エレガントで流麗なピノ・ノワール像を打ち出しながらも、ボディには一定の緻密さと凝縮さを兼ね備えています。果実感は黒系寄りですが、同時に野イチゴのような野性味ある赤系果実も感じられます(表情は陰的)。突出した要素がなく、明快な果実味や旨味で訴求するようなタイプでもないので、ある意味、派手さのない地味なスタイルではありますが、それでもその質感は明らかに一段上の水準であり、特別キュヴェらしい良質な表情なのは確かなので、時間をかけてじっくりと向き合う程に説得力が増していくタイプだと言えそうです。
分かりやすく抜栓直後のインパクトを重視するスタイルのワインも散見される中、逆に己が持てる質実さのみで訴えかけ、抜栓後時間を与えるほどに昇華し、コアにある本来の果実味や清廉さを生かして愚直に歩むその姿には、終始好感が持てるのも確かです。とは言え、味覚でわかりやすく評価できるようなタイプではなく、なおかつエネルギー溢れるようなタイプでもないので、どうしても絶対価格の高さ(コストパフォーマンスの分の悪さ)がネックになっている印象でもあります。
(2022/08)