- Good Quality -
滋賀の「ヒトミワイナリー」や、大阪のアーバン・ワイナリー「島之内フジマル醸造所」など、関西を代表するワイナリーで経験を重ねた「岩谷澄人」が、全ての集大成として選んだ山形で興したのが「イエローマジックワイナリー」。
山形県産のスチューベンで造られる赤のスパークリング・ワインがこの「パンプアップ」。外気温2度という、雪が積もる真冬に3ヶ月半もかけて自然発酵させたワインで、発酵中に強い還元臭が発生したものの、発酵終了後は完全に臭いが消えたこともあり、造り手を終始ヤキモキさせたことから「ツンデレ」と名付けられています。生産本数は僅か1,460本のみ。
カテゴリーとしては泡を含むスパークリングになり、裏ラベルにも炭酸が強めなのでよく冷やすよう注意書きもありますが、今回はロット特有の問題なのか、実際にはほぼ完全に泡がない状態で、事実上スティルワインの赤といった印象です。クロージャーには王冠が使用されており、抜栓時も特に泡を含んでいるような印象もなく、グラスに入れても一切泡立たなかったので、少なくとも今回のロットに関しては完全に泡が抜けてしまっていたようです。
色調はしっかりとした濃いめの深い赤で、オーディナリー・ルージュのような芳香性の高さや際立った旨味は感じられないものの、その代わり充足感のあるボディが印象的で、果実そのものをかぶりついているかのような満足感があるので、全体像としてはいたってポジティブな傾向にあります。スパークリングとして捉えた場合は完全に肩透かしにあってしまいますが、冷やして飲むスティルの赤として素直に受け取れば、それはそれで普通に楽しめてしまう印象でもあります。発酵中に発生したという強い還元臭も皆無で、変なクセもなくネガティブな印象は一切ないので終始印象は良好です。
(2022/03)