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滋賀の「ヒトミワイナリー」や、大阪のアーバン・ワイナリー「島之内フジマル醸造所」など、関西を代表するワイナリーで経験を重ねた「岩谷澄人」が、全ての集大成として選んだ山形で興したのが「イエローマジックワイナリー」。ワイナリーの略称でもある「YMW」の文字が刻まれたこのキュヴェですが、今回の2020年ヴィンテージは、アメリカのNYで生まれた品種「スチューベン」に、日本原産の「マスカット・ベーリーA」と、国際品種の「メルロー」がブレンドされています(葡萄は全て山形県産)。生産本数は僅か2,600本のみ。
色調はやや薄めで、赤ワインとロゼの中間のような印象ですが、澱(非固形)が含まれていることもあり、見た目としてはやや「にごり酒」のような傾向にあります。立てておけばある程度は沈みますが、そもそも分離させて飲むようなタイプではないので、思い切って混ぜてしまっても特に問題ないと思います。
抜栓直後から一気に広がるスチューベンの甘い香りが非常に印象的ですが、実際に飲むと一般的なラブルスカ種のイメージとは大きく異なり、これぞ「出汁の塊」とも言えるような旨味の詰まった液体がひたすら体に染み込んでいきます。ネガティブな要素は皆無、そしてどのような料理にでも合いそうなその立ち振る舞い、そして心地良く非常に飲みやすいアルコール感に(11%)、ひたすらジューシーで柔らかい物腰から生み出される魅力がストレートに伝わってきます。欧州のような完成された伝統産地のスタイルを後から追いかけるようなタイプではなく、あくまでも日本という産地にしかできない世界観が見事に結実している印象で、個人的にも以前から可能性を感じている方向性ということもあり、この独自性と明快な美味しさ、そして造り手による圧倒的なセンスの良さをとにかく実感します。
(2022/02)