- Good Quality -
数ヶ月間ステンレスタンクで落ち着かせた後、フレンチオークに移し約4年もの長期熟成を経た、都農ワインにおけるマスカット・ベーリーA(畑は都農町と川南町)の最高峰とも言えるキュヴェになります。
一般的には早飲みタイプが多い中、樽を使用した長期熟成型という珍しいタイプではありますが、同じく長期熟成スタイルで造られる楠わいなりーのベイリーAとは全く異なる方向性なのが興味深いところでもあります。樽熟成らしいバニラのニュアンスは感じるものの、熟成期間の長さから綺麗にボディと馴染んでいる傾向にありますが、それ以前にとにかくドッシリとした充足感のあるボディが非常に印象的で、ブルゴーニュ的な世界観だった楠わいなりーのベイリーAとは異なり、こちらはむしろボルドー的な世界観となっています。まさに温暖な宮崎の気候と、火山性土壌の黒ボク土によるテロワールが色濃く反映された世界観とも言えそうです。
アタックから十分な充足感が広がるリッチなスタイルではありますが、どこかウイスキーバレルを彷彿とさせるような雰囲気があり、その表情はかなりハッキリとしている傾向にあります。熟成期間が長いのでうまくバランスは取れていますが、コントラストは比較的高めなので抜栓後に少し時間を取った方がより良くなる傾向にはあります。抜栓翌日に持ち越すと、余計な肩の力が抜け、マスカット・ベーリーAらしい果実感や酸味が心地よく広がる傾向にあるので、葡萄本来の表情を楽しみたい場合はゆっくり時間をかけて向き合う方が良さそうな印象です。
個性的な世界観で造られるマスカット・ベーリーAなのは確かで、価格帯も若干高めではありますが、それでも相対的なコストパフォーマンスは良好な印象で、全体像としては可能性を感じる興味深い内容だとも言えます。リッチで充足感がありながらも日本のワインらしく綺麗に纏めるというその姿は、他にはない個性でもあるので、今後も随時進化させていって欲しい印象でもあります。
(2022/02)