- Recommended -
フランシュックを代表する歴史あるワイナリーでもあるブーケンハーツクルーフの「マーク・ケント」と、スワートランド・インディペンデント・プロデューサーズの主要メンバーでもあるレンジェンド「カーリー・ロウ」によって、2009年に設立されたワイナリーがこの「ポルセレインベルグ」。見た目的にも、ドイツのハイデルベルグ社製の活版印刷機で刻印された真っ白なラベルが印象的ですが、その名は元々スワートランドにあるマルムズベリーの丘の名前が由来で、この片岩質土壌に植えられたシラー100%で造る(畑の広さは60ha)、造り手と同じ名前のキュヴェを1種類のみリリースしています。
全房比率100%。発酵では初めてポンピングオーバー(ルモンタージュ)を最小限に抑え、代わりに網で上から抑えるサブマージド・キャップを導入。熟成は2500リットルのフードル90%、卵型のコンクリートタンク10%。瓶熟期間は12ヶ月。
2018年は年間降雨量が224mmと、例年通りの乾燥した年になりましたが、春先の程よい温暖さと降雨(60mm)によって、幸先の良い成育スタートをきっています。最終的な収穫量は3t/haと非常に少なくなっていますが、結果凝縮度が高く、実際に2017年と比較しても明らかに果実そのものの凝縮感と甘味に秀でる傾向にあります。2017年は清涼感のあるハイトーン系のニュアンスがより強調されていましたが、2018年は明快な果実の甘旨味が印象的で、梅紫蘇系の非常にわかりやすい「美味しさ」が最初の一口目からストレートに伝わってきます。相対的にグリーン系のハーブ風味やスパイス感は控えめですが、それが結果的に瑞々しいボディと相まって、良質なボルドーを彷彿とさせるような霧がかった森林感へと繋がっているのが興味深いところでもあります。
翌日に持ち越すと、純粋な果実味は穏やかになりますが、反面、酸が一定量感じられるようになり、ポルセレインベルグらしい滑らかで緻密なボディと爽やかで落ち着いたハーブ感によって、全体的なパッケージングの良さがより明確になる傾向にあります(とは言え純粋なポテンシャルピークは抜栓日寄りな印象)。表情や方向性は確かにヴィンテージによって異なる印象ですが、それでも全体像としては「カーリー・ロウの手腕が際立つパッケージングの良さ」が最大の特徴で、2017年よりも明確に「誰が飲んでも普通に美味しく楽しめる」世界観になっているというのが2018年の最大の特徴と言えるかもしれません。100点獲得というパーフェクトワインに対するイメージとは異なり、圧倒的なポテンシャルや完璧かつ偉大な世界観を有するようなタイプではなく、実際はいたって現実的に普通に美味しいワインといった系譜なので、正直過度の期待は禁物ではありますが、それでも資金に余裕がある富裕層であれば、積極的に選択する価値はあると言えそうです(2017年をより高く評価するVinousの観点も十分理解できるのが興味深いところかも?)。
(2022/01)