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ヴィンテージが刻印されたスパークリング日本酒という珍しいアイテムですが、今回のロットはヴィンテージが2020年、生産年月日が2021年の6月となっています。生産本数は僅か600本のみで、全て専用の化粧箱入り、さらには1本1本にロットナンバーが手書きで記されています。
アルコール度数は13%、使用される米は八反錦と風鳴子、精米歩合は55%、そして使用する酵母はCEL-24とAA-41。基本的な造りに関しては2019年ヴィンテージと同じなので、純粋に米の収穫年と仕込みの年月日が異なっているだけだと言えそうです。
流石に今回のロットは製造年月日が最新なので、直前に試飲した2019年とは全てが明確に異なります。表情そのものは穏やかで大人しく、余韻がやや短めで非常にニュートラルな性質を持っているという点は同じですが(故に今回のロットも飲み頃が過ぎると一気に落ちてしまうかも…)、それでも口当たりは非常に滑らかかつ一定のボリューム感があり、全体的な表情も一般的な日本酒像とはやや異なる印象を受けます。まさにペルルとしての独自の個性が反映された世界観だとも言え、他のスパークリング日本酒と同列では若干比較しにくい印象を受けますが、良質な造りと丁寧な質感には一定のクオリティを感じるので、クラス相応の説得力は有している印象でもあります(それでも純粋なコストパフォーマンスとしてはやや分が悪そう)。
特に印象的なのが独特な甘味で、塊感のある甘さがボディ全体にしっかり行き渡っていることもあり、口当たりとしてはスッキリしているものの、後味にかけてどっしりとした甘味が伝わる傾向にあります。他のスパークリング日本酒とはやや異なる系譜の甘味ではありますが、アタックではなくアフターにかけてボディーブローのように感じる傾向にあるので、基本的に甘さを感じるお酒が苦手な人にはあまり向いてないかもしれません(甘さが強いのではなく、甘さに重さを感じるようなタイプ)。全体的に、日本酒らしいキレやスパークリングらしいフレッシュな爽快感を楽しむようなタイプではなく、まろやかで円熟味のある優しく穏やかな佇まいを享受する系譜にあるので、この辺りの性質をどう捉えるかで人によって多少評価が分かれる印象かもしれません。ともかく、一言で言えばとにかく「丁寧な造り」が印象的なので、スパークリングに対して溌剌さよりも優しさや穏やかさを求める人には、ちょうど良い選択肢になるとも言えそうです。
(2021/08)