- Very Good Quality -
畑のオーナーの意向で、樹齢の高い葡萄の樹を全て引き抜こうとしてたところを止めに入り、残り半分ほどを救出。標高は520m、鉄分を含む赤い砂岩土壌で、1981年と1983年に植樹された自根の単一区画となります。
他のアルヘイトのキュヴェとはガラッと変わる、特異性のある表情なのが印象的です。他のキュヴェは全体的にややグリーン系にシフトした色調で、ミネラルやキレ、爽やかさ、そして果実の充実感がベースにありましたが、このマグネティック・ノースは橙系にシフトした色調で(若干グリ系っぽい鈍さも)、とにかく圧倒的な「酸」が主体となっています。さらに、スキンコンタクト系のワインにも共通する複雑な要素や、ジャック・セロスのような酸化熟成系のスタイルにも共通するやや退廃的なニュアンスがあり、同じスカーフバーグで造られるハイルクランスにも若干感じられた要素ではあるものの、このマグネティック・ノースに関しては明確な基軸となるほどハッキリとした存在感を放っています。とはいえ、退廃的な要素が感じられると言っても古ぼけたような印象は一切なく、他のキュヴェと同様にフレッシュで瑞々しく素直に楽しめます。わかりやすい甘みや果実味で構築するような安易さはないものの、それでもむしろ、素直に楽しめる魅力や純粋な訴求力としてはアルヘイト随一な印象でもあるので、思った以上に間口は広い印象でもあります。
表層の強い酸、その内部にある退廃要素、さらにそれらの中心に鎮座する立体感のあるミネラルの土台、これらの三要素が明確に構築されている傾向にあり、その存在力、そして内包するポテンシャルには高いものがありますが、それでも全体像としては「分かりやすく楽しめる美味しいワイン」といった傾向にあるので、気難しく構える必要は一切ありません。特に普段からスキンコンタクト系のワインや、酸化熟成系のシャンパーニュをよく嗜んでいるような人にとっては、ピンポイントで刺さる世界観だとも言えるので、特定の層からは非常に高い評価を受けそうな印象でもあります。そういう意味では、ハイルクランスと同じように相対的にやや価格が高い傾向にあるのが気になるところではありますが(南アフリカの白ワインにいきなり1万円出せる人はそういない?)、それでも現時点で既に世界的に高い評価を得ているのは確かなので、将来性を考えると入手がそれほど困難ではない今がチャンスなのかもしれません。
(2021/05)