- Very Good Quality -
2017年がファーストヴィンテージとなる新しいキュヴェ。アフリカーンス語で「涙する崖」という意味を持つこの「ハイルクランス」は、畑にそびえる崖の名前でもあります。標高は450m、赤い砂岩土壌で、1974年と1983年に植樹された単一区画の畑となります。
キレのあるスッキリとしたシャープな佇まいはファイヤー・バイ・ナイトと同等ですが、一段集中力が増している傾向にあり、素直にその世界観に引き込まれます。揺るぎのないミネラルがコアに鎮座しているものの、険しさや難解さは皆無で、驚くほど自然に受け入れることができます。ボディはタイトに纏まっているものの、その内部は緻密かつ重層的で、グリーン系の多様なハーブに豊富な酸、そして岩塩、蜜、グレープフルーツ、仄かな黄桃やマンゴー(非トロピカル)など、思いの外多彩な要素で占められています。抜栓翌日になるとポテンシャルが更に開花する傾向にありますが、それでもマジョリティ向けのストレートな魅力を持つスタイルは継承されているので、終始素直に楽しむことができるのもポイントの一つです。
相対的にやや価格が高い傾向にあるので、気軽に試せる価格ではないのが残念なところではありますが、それでも親近感あるその表情の奥には、このクラスに相応しいだけの存在感とエネルギーが込められているのは確かなので、最終的には相応の満足感が得られるのは間違いありません。南アフリカのスカーフバーグという地が放つ独自性と潜在能力を、もう一つの単一区画ワインでもあるマグネティック・ノースとともに、ぜひ嗜んでもらいたいところではあります(どうしてもどちらかを選ばなくてはいけない場合は、2018年に関してはこのハイルクランスの方がお薦めしやすい印象かも?)。
(2021/05)