- Very Good Quality -
シャンボール・ミュジニーを代表するトップドメーヌがこの「コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ」。村を代表するグラン・クリュの「ミュジニー」や「ボンヌ・マール」について、どちらも最大の区画を所有しているということもあり(それぞれ70%弱と20%弱)、ジョルジュ・ルーミエなどと並び、まさにこの地を表す象徴的な生産者となっています(ミュジニーから白ワインを造っているのも印象的)。
今回のプルミエ・クリュは、実際にはプルミエ・クリュの畑から造られているわけではなく、シャンボール・ミュジニーを代表するグラン・クリュの「ミュジニー」の内、樹齢25年に満たない葡萄を格下げして、敢えてプルミエ・クリュとしてリリースしています(全体の約40%を1級に格下げ)。なので、そのテロワールは完全にグラン・クリュの「ミュジニー」そのものとなります。
最初の一口から、村名シャンボール・ミュジニーとは別物という印象で、体躯内部にある堅牢感や、無骨さすら感じられるタンニン、そして硬質な塩味など、コアにある充実感と意志の強さを明確に感じます。とはいえ、全体的な世界観は村名シャンボール・ミュジニーと同様で、また、酸の資質も同じということもあり、基本的には同じ道筋の延長線上にあるようなタイプとなっています(まさに同じ造り手のワインといった印象)。2014年というヴィンテージのスタイルかもしれませんが、全体的にやや地味で、カッティング・エッジなモダンワインと同列で扱ってしまうと、完全に埋もれてしまうのもまた事実なのでやや注意が必要です(偉大さや感動を味わえるようなタイプではなく、あくまでも現実的に飲んで楽しむ系統の世界観)。
奥底に控える果実味には、ヴォギュエらしい純朴で魅力ある表情(赤系果実の甘旨味)が感じられますが、今のところ7割ぐらいがマスキングされている傾向にあり、全体を通して退廃的な方向に導かれているのがやや残念ではあります。決してわかりやすいタイプのワインではないものの、それでも時間をかけてじっくりと向き合うことで、無理なく自然に体に浸透していくことは理解できると思うので、ヴォギュエのワインを飲み慣れている層であれば、一定水準の満足感が得られると思います。また、村名シャンボール・ミュジニーとは異なり、ポテンシャルピークも抜栓翌日以降にあったので、今後もまだまだ時間をかけて熟成させることが可能な印象です。とはいえ、絶対的にかなり高価で、純粋なコストパフォーマンスとしてはあまり多くを望めないので、一般層は無理して手を伸ばす必要はなさそうです。
(2020/02)