- Good Quality -
シャンボール・ミュジニーを代表するトップドメーヌがこの「コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ」。村を代表するグラン・クリュの「ミュジニー」や「ボンヌ・マール」について、どちらも最大の区画を所有しているということもあり(それぞれ70%弱と20%弱)、ジョルジュ・ルーミエなどと並び、まさにこの地を表す象徴的な生産者となっています(ミュジニーから白ワインを造っているのも印象的)。
村名のシャンボール・ミュジニーは、ヴォギュエの歴史の中ではかなり新しいアイテムで、もともとヴォギュエ伯爵がプルミエ・クリュ以上のワインしか生産を認めていなかったこともあり、村名がリリースされるのは伯爵の死後となっています。ベースとなるのは新たに取得した村名区画ですが、ボンヌ・マールに隣接するレ・フュエとレ・ボードの1級区画も、約10%ほどブレンドされています。
ヴォギュエの村名シャンボール・ミュジニーは、個人的にもかなり思い入れの深いワインで、以前、ボーヌのレストランで伝説的クルティエのソニエさんご夫妻と共に食事をさせていただいた際に選んでいただき、共に飲んだワインだったりもするので(その時に飲んだのは2012年ヴィンテージ)、今でもどこか感慨深いものを感じます。一般的にはエレガントで繊細なワインを産むとされるシャンボール・ミュジニーですが、今回の印象としては、確かに繊細さや優しさも感じられるものの、その内部に意外とボリュームのある丸いボディを有している傾向にあり、もしかするとプティ・ボンヌ・マールとも言えるフュエなどの、1級区画の葡萄が土台を形成しているからなのかもしれません(果実感も赤よりはやや黒より)。また、相対的に酸が目立つ印象で、やや退廃還元的な資質ということもあり、多少飲み手を選ぶ傾向にあるかもしれません。以前経験した2012年が、魅力溢れる甘旨味を主体とした世界観だったこともあり(若い頃の1999年のキュヴェ・デュヴォー・ブロシェにも似た果実感)、非常に対照的な表情を持っている印象でもありますが、この辺りは2014年というヴィンテージのスタイルを反映させている部分でもあり、基本的には「従来のブルゴーニュらしい王道的スタイル」とも言えそうです。
わかりやすい果実味を前面に出すワインや、アタック重視の濃縮されたワインの中では完全に埋もれてしまいますが、それでも時間をかければかけるほど、じっくりと良さが滲み出てくるような系譜にあり、日常的かつ現実的に「食事とともに飲むことで楽しめる世界観(いい意味で脇役に徹している)」だとも言えそうです。ただ、そのスタイルとは裏腹に、実際には非現実的な価格帯に位置しているという難しい問題を抱えているので、残念ながら富裕層向けの日常ワインという範疇を超えることはないのかもしれません。また、今回のロットだと、ポテンシャルピークに関してもやや抜栓日寄りな印象で、翌日に持ち越すよりも、抜栓後にある程度時間をかけてその日のうちに飲み切る方が良好な結果が得られそうな印象なので、ヴォギュエを普段から飲み慣れてしっかりと理解している層以外には、よりお薦めしにくい印象でもあります。
(2020/02)